目次


開催案内

日時

2017年12月26日(火曜日)午後3時から

 

場所

理学部6号館401講義室
アクセス 建物配置図(北部構内)【4】の建物

 

プログラム

15:00〜 ティータイム「京都ではめったに食べられない?北海道スイーツ」

15:30~

 

「データ同化:ゲリラ豪雨予測から異分野連携へ」
三好 建正氏(理化学研究所 計算科学研究機構 データ同化研究チーム チームリーダー)

 

データ同化は、シミュレーションと実測データを融合するデータサイエンスで、力学系理論と統計数理に基づく。近年の天気予報の向上には、衛星データなどを扱うデータ同化が大きく貢献し、気象学の中で主要な分野となった。計算機性能が向上しシミュレーションが広がる中、データ同化が役立つ場面も増える。本講演では、気象学における最先端のデータ同化研究を紹介し、森林や古気候への展開、さらに幅広い応用に向けた展望を議論する。(講演終了後、質疑応答)

16:30~

「地球はどこでも研究室:氷河から熱帯雨林、ヒマラヤから海中まで」
幸島 司郎氏(京都大学 野生動物研究センター 教授)

 

ヒマラヤの氷河に住む昆虫の発見から始まり、氷河生態系と地球環境変動のかかわり、ヒトの白目、イルカの眠り方、そしてボルネオやアマゾン、インドでの野生動物研究にかかわることになった、私の「自由すぎる」研究遍歴のお話を交えながら、「自分の目で見て自分の頭で考える」フィールドワークの重要性と楽しさについてお話します。(講演終了後、質疑応答)

17:30~

年忘れ懇親会(ピザあります)*学生無料 / 教職員1,000円程度
 

備考

*理学部・理学研究科の学生・教職員はどなたでもご参加いただけます。申し込み不要。


講演動画

『データ同化:ゲリラ豪雨予測から異分野連携へ』三好 建正 氏

 

『地球はどこでも研究室:氷河から熱帯雨林、ヒマラヤから海中まで』幸島 司郎 氏

 


開催報告

三好 建正氏
 
幸島 司郎氏

三好建正さんの講演では、天気予報にデータ同化がどのように活かされてきたのという点から説き起こし、データ同化の「カオス同期」としての数理的背景を述べ、現在、三好研究グループが行っている京コンピュータよる流体方程式の高精細シミュレーションとPhased Array Raderの高精度な計測技術をデータ同化によって融合させることで,数分間隔という超短時間の局地豪雨(ゲリラ豪雨)予測が可能になったという画期的な研究成果が紹介されました。また、計算機シミュレーションとデータ科学の織りなす新しい理学分野の基本リテラシーとしての重要性から、MACSプログラムでデータ同化のスタディーグループを企画して、その中でデータ同化の学生向けの講義やセミナーを行っているなど、本学における教育面への波及とその成果についても触れられました。 データ同化は気象分野にとどまらず「高精細シミュレーション」と「さまざまな計測」という一般的な理論的枠組みで実現できるという数理の持つ水平展開力を活かした学際分野です。実際、三好グループでは、古気候復元の問題やシベリア植生の問題などへのデータ同化研究を行っており、その研究は幅広く展開しています。これはまさに数理がつなぐ諸分野研究への展開の姿であり,MACSの目指す1つの姿でもあります。最後に講演後の質疑応答時間の中で,「同化とは何かを取り込むということを意味するが、データ“同化”とはどういうイメージになるのか」という観点で議論が行われ、「データを“消化する”シミュレーション」という異分野交流ならではともいえる面白いキーワードが飛び出すなど、講演は盛況でした。(文責 坂上貴之)

 

幸島司郎さんの講演は、京大フィールドワーク研究の伝統再生という、京大野生動物研究センター設立経緯の話から始まり、幸島さんが行ってきたフィールドワーク研究成果が紹介されました。まず、京大山岳部時代に雪山で虫を見つけたことから始まった雪氷生物学の話では、ヒマラヤ雪山で発見した虫(ヒョウガユスリカ)の生態調査を通じて、「氷河にも生態系があること」を発見したことを話されました。加えて、氷河生態系研究の重要性について、生態系理解に加えて、アイスコア(氷河から採掘された氷の柱)内の雪氷生物の分析によって年代推定や当時の環境推定ができること、氷河融解要因の理解(雪氷生物が氷河表面に色をつけることで氷河融解を促す)に繋がることなどを説明されました。このほか、イルカの睡眠の話題では、イルカは泳ぎながら片目を閉じて眠ることや片目だけでも周囲を警戒できるための個体・集団行動をとっていることを、ヒトの白目に関する話題では、他霊長類と比べてヒトの目は横長な形で白目があるなどの特徴を持つことや種内コミュニケーションにおけるその意義について、それぞれ説明されました。講演は分野の枠を超えて盛り上がり、その後の質疑応答や懇親会の時間ではフィールドワークの多彩な現場エピソードや成果についてさまざまな議論が行われました。(文責 高瀬悠太)