目次


開催案内

日時

2022年11月18日(金)15:00〜18:00

 

開催形式

対面(セミナーハウス)とオンライン(Zoom)のハイブリッド

参加登録:https://forms.gle/w11spMhnXhkrfWi46

登録されたアドレスに、ID・パスワードを送付いたします。
「なお対面参加の場合も,理学部のルールにより対面参加可能人数を50名までと限定しておりますので,対面参加の方も事前登録にご協力ください.対面参加希望者多数の場合はオンライン参加をお願いする場合もございますので,ご了承ください.」

プログラム

15:00〜16:00

講演1

「地球気候と海の波」

吉川 裕博士

京都大学理学研究科地球惑星科学専攻  教授

 

海は地球表面の70%を占め、その海はたいてい風波に覆われている。風波の周期はせいぜい10秒程度であるが、最近の研究は、そのような短い周期の波が、海表面をかき混ぜて海面の水温を変化さることで、平均的な大気とその長い周期の変動、すなわち地球の気候に影響を与えていることを示唆している。しかし、流体力学の立場からは一見すると奇妙である。なぜなら、流体力学の理論に基づけば、渦なしの風波はかき混ぜを起こせないからである。この問題を、最新の数値シミュレーションをもとに解き明かす。

16:15〜17:15

講演2

「新触媒、新反応、新機能材料」

侯 召民博士

理化学研究所 開拓研究本部 侯有機金属化学研究室 主任研究員 兼 理化学研究所  環境資源科学研究センター 先進機能触媒研究グループ  グループディレクター

 

新しい触媒の開発は、従来不可能だった新反応の開発や従来にない画期的な特性をもつ新材料の創出などに繋がり、物質科学新領域の開拓や現代社会の発展に大きく貢献することができます。本コロキウムでは、演者らが行ってきた研究を中心に、新しい構造をもつ有機金属錯体触媒の開発、それらを用いた炭素―水素結合の活性化と変換、窒素など小分子の活性化と官能基化、さらに新規自己修復材料の創製などについて紹介します。

17:15~18:00

継続討論会

  

備考

◎本コロキウムは理学部・理学研究科の学生・教職員が対象ですが、京都大学・理化学研究所に在籍されている方はどなたでもご参加いただけます。
◎学内教育プログラムに関するイベントであるため、学外・一般の方の登録は原則不可としております。ご登録いただきましてもリストより削除させていただくことがあります。

 

問い合わせ先

macs*sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)


開催報告

第21回MACSコロキウムの前半は、地球惑星科学専攻・地球物理学教室の吉川裕教授に「地球気候と海の波」というタイトルで講演していただきました。

講演は、現在の気候変動モデルでは地球の気温変動を充分再現できないこと、気候変動の理解には地球の7割を占める海面の水温を理解することが重要である、というお話から始まりました。地球物理学教室では地球を物理学の観点から研究します。気候を支配する支配方程式である運動量方程式、熱エネルギー保存式などは、非線形項のため解析的に解くのが困難であることを示されました。そこで大気と海洋を格子化し、数値的に解く数値シミュレーションを行います。しかし海洋の動きには10-4~107 mの幅広い規模の運動が共存しており、一気に解くことができません。そこで格子平均のパラメタリゼーションが重要になることを示されました。

海面水温の理解には、海洋表層でのかき混ぜが重要になります。かき混ぜが起こると、冷たい深層水が表層に現れ、水温が下がります。かき混ぜの要因には風、熱、波があり、風と熱は大気の知見からパラメタリゼーションがされています。先生は、まだ十分理解されていない、波によるかき混ぜに着目されてきました。一般的にかきまぜは渦が担うのに対し、教科書的な流体力学では水面波には渦がありません。波と流れの相互作用により渦度力が生じてかき混ぜが起きる、ラングミュア循環について説明があり、その検証が必要であることを示されました。数値実験の他、先生が実際に行った和歌山県田辺湾の京大防災研究所の観測塔に流速計を設置し流速を測定した実験や、水槽実験が紹介されました。

最後に、波によるかき混ぜを理解し、気候システムの解明、気候変動の予測につなげたいとの展望が示されました。質疑応答では、先生は数値計算も実験も行う分野でも珍しいタイプの研究スタイルであることや、地球の自転も考慮に入れた、フランスの回転する水槽実験の紹介がありました。
(文責:冨田夏希)

 

第21回MACSコロキウムの後半は、理化学研究所の侯召民博士に「新触媒、新反応、新機能材料」というタイトルで講演していただきました。

講演はエチレンーアニシルプロピレン共重合体からなるシートに針で穴をあけても、中の水が漏れないことを紹介する動画から始まりました。この共重合を制御した形で実現するには候先生のグループが初めて合成された希土類金属触媒が必要不可欠です。有機金属化学・触媒の歴史の紹介、希土類金属の特徴の説明に続き、希土類金属触媒の様々な特徴や反応活性が紹介されました。

続いて、極性オレフィンと非極性オレフィンの共重合を実現した研究の詳細が紹介されました。ヘテロ原子を含むオレフィン(極性オレフィン)とエチレン(非極性オレフィン)の共重合は難しく、例えば前周期遷移金属触媒を用いると、ヘテロ原子が触媒毒として働き重合が進行しません。また、後周期遷移金属触媒を用いると、得られた共重合体の極性オレフィンの組成比や分子量が低いことが課題となっていたそうです。候先生のグループは希土類金属とヘテロ原子の相互作用に着目し、希土類金属触媒を適切に使い分けることで、ヘテロ原子を含むα-オレフィンとエチレンとの共重合を様々な混合比で実現しました。この共重合の反応機構の詳細についても解説がありました。

最後に、エチレンーアニシルプロピレン共重合体の驚異的な特性が、映像と定量的なデータを用いて紹介されました。この共重合体は高い伸縮性や回復力を持つだけでなく、空気中や水中で自己修復することができます。また、例えば置換基としてヘキシル基を導入すると、ガラス転移温度が低くなるため、氷水の中でも自己修復できるようになります。従来の自己修復機構は酸やアルカリに弱かったり、熱や光などの外部エネルギーを必要としていましたが、エチレンーアニシルプロピレン共重合体はそれらの困難を克服しています。革新的な自己修復のメカニズムに対する理解も進んでいます。共重合体では、エチレン部分がミクロ相分離により結晶のようなナノスケールのドメインを形成しており、このドメインが切断されても分子運動ですぐに元に戻ることが重要な役割を果たすそうです。機構の理解が進んだことで、ミクロ構造を制御したポリイソプレンに自己修復機能を持たせることにも成功されました。

まとめのスライドでは、新しい触媒を作ることで、新しい反応や新しい機能材料がうまれることを強調されていました。  

講演後の質疑応答では、ミクロ相分離による自己修復が起こる条件やDFT計算の有用性についての議論で盛り上がりました。
(文責:伊丹將人)