量子コンピュータセンター

量子コンピュータの実機が見たいという希望が実現しました.2種類の量子コンピュータの実装についてそれぞれ理論的な説明の後に実機を見学するという流れでした.1つ目に見学したのは光量子コンピュータと呼ばれるものでした.研究室自体ができたところで量子コンピュータも組み立てている段階でした.2つ目の見学では量子コンピュータセンターのセンター長である中村先生に量子コンピュータの歴史からお話いただきました.例えば,素因数分解を高速に解けるショアの量子アルゴリズムはインパクトが大きく,量子情報科学の研究が加速していったと聞きました.ただ,量子コンピュータの開発はめざましい発展をしている一方で,大規模・高精度化にはソフトとハードの両面でまだ課題が多い印象でした.お話の後には64Qbitの量子コンピュータを見せていただきました.開発中の実物を見るとその上で動くアルゴリズムの研究意欲が少し湧いてきました.

(文責: 竹田航太・数学数理解析専攻D2)

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仁科加速器科学研究センター

二日目の午前にはRIビームファクトリー(RIBF)を見学させていただきました。RIBFは不安定原子核のビーム(RIビーム)を生成、検出、利用する加速器施設であり、113番元素ニホニウムもRIBFで発見されました。RIBFでは水素からウランまでの全元素の不安定原子核を発生することができ、重い原子核だけでなく軽い原子核の研究も活発です。特に最近「0番元素」テトラ中性子核がRIBFにて観測されました[1]。今回私たちはその観測に用いられた実験装置群を間近で見せていただきました。
テトラ中性子核とは4個の中性子だけで構成され陽子を含まない原子核です。テトラ中性子核の生成にはヘリウム-8(陽子2個、中性子6個)のビームが用いられています。ヘリウム-8を陽子に衝突させ、ヘリウム-8からα線(陽子2個、中性子2個)を叩き出すことで、4個の中性子だけが残り、テトラ中性子核が形成されます。 不安定なヘリウム-8を作るには安定な原子核同士を衝突させる必要があり、実際の実験では酸素-16ビームをベリリウムの標的に照射することでヘリウム-8の2次ビームを生成しています。酸素-16ビームの加速に使われたのが超伝導リングサイクロトロン「SRC」です。私たちはSRCを背景に記念写真を取りましたが、その写真からもSRCの巨躯が窺い知れると思います。SRCは総重量8300トンの円形加速器で、超伝導コイルを覆う純鉄のシールドが加速器内部に発生する強力な磁場を遮蔽しています。SRCの特徴はサイクロトロン方式を採用している点にあり、原子核を連続的に加速して大強度のビームを作りだすことができます。SRCから大強度のビームを安定して供給できるおかげで、最終的にテトラ中性子核が発生するイベント数を稼ぐことが可能になります。SRCに入射した酸素-16ビームは強磁場の下で加速され、最終的に光速の60%程度にまで至り、ベリリウム標的に衝突させられます。
標的に衝突して生じた2次ビームは超伝導RIビーム生成分離装置「BigRIPS」を通過します。2次ビームの中には後で必要なヘリウム-8だけでなく他の原子核も含まれています。BigRIPSを通じて、ヘリウム-8ビームだけを選別し次の実験装置に輸送することができるのです。この間にビームは、人が歩いても数分かかる経路を進んでいきます。 ヘリウム-8ビームは液体水素標的に照射され、SAMURAIスペクトロメータに送られます。ヘリウム-8と水素原子核の陽子が散乱してテトラ中性子核が形成されることは上で述べた通りですが、どのようにテトラ中性子核の存在を確定するかという問題が残っています。中性子のみから成るテトラ中性子核は電気的に中性であり、テトラ中性子核を壊さずに正確なエネルギーや運動量を直接測定するのは困難です。実際の実験では、テトラ中性子核の副産物として得られるα線と陽子線のエネルギーを高分解能で測定することで、間接的にテトラ中性子核のエネルギー分布が決定されました。その測定には、多種粒子の軌道やエネルギーを複数同時計測できる検出器群であるSAMURAIの能力が発揮されています。本稿のテトラ中性子核談は、まさにこのSAMURAIの目の前でご説明いただいた内容に基づいています。
RIBFの加速器・検出器群を見学し、いわゆる「巨大科学」の空間的・時間的スケールの大きさに圧倒されました。テトラ中性子核において中性子同士を繋ぎとめておくための力は3個の中性子の間に働く三体核力であると考えられており、理論研究は古くから行われていますが、実験的知見は未だ乏しいようです。今回のテトラ中性子核の観測は核力に対する人類の理解のベンチマークを与えており、理論物理を専門とする報告者としては、巨大な実験施設と膨大な時間を投じてこの実験を成功させた多くの実験家の方々に畏敬の念を覚えました。

[1] Duer, M., Aumann, T., Gernhäuser, R. et al. Observation of a correlated free four-neutron system. Nature 606, 678–682 (2022). プレスリリースhttps://www.nishina.riken.jp/news/2022/20220623.htmlも参照

(文責:下村 顕士・物理学・宇宙物理学専攻M2)

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創発物性科学研究センター 創発生体関連ソフトマター研究チーム

主宰者である石田先生により, 前半は研究紹介をして頂き, 後半は研究室訪問を行いました. 石田研究室では, 軽量かつ柔軟で生体に優しい, ソフトマテリアルを人工的に作成し, その材料に優れた機能をいかに持たせるかを研究しています. 通常, 人工的に作成したソフトマテリアルでは, 中の粒子がばらばらの配向を持つことで, 全体としては当方的な物性を持ちます. しかし, 多くの生体組織では巨視的にも異方性を持つ結果, 驚異的な機能を有しており, 石田研究室では, 人工的なものにもこの異方性を持たせることに着目しています. マテリアルを異方化させる上では, 非接触・非破壊的な非常に強い磁場を用いていました. 磁場により, 物質の配向がそろった状態で固定化された様々なソフトマテリアルの作成に成功しており, 今回は力学的異方性を示すヒドロゲルについて説明を受けました. 実際に実物を触らせて頂きましたが, この物質は横方向にはぶよぶよとしていて変形が容易ですが, 縦方向の変形には強い抵抗を持ちます. 縮めることが内部の配向のそろったナノシート間の反発により難しく, 引きちぎろうと伸ばしてもかなりの力を要しました. 最新の研究では, 力学的異方性をさらに強化したり, 熱や光によりゲルの伸縮を駆動したり, 磁場の印加方向を変更して力に対する極性応答を持たせたりと, 様々な試みがなされていました. 石田先生の紆余曲折のキャリアや, 研究で大事にされている感覚をユーモアを交えてお聞きすることができて, 科学を試ざす者として大変刺激を受けました. 研究室訪問では, 実際にヒドロゲルを精製する現場や, 強磁場を発生する電磁石を見ることができました. 最後に, このヒドロゲルは名前の通り, その成分のほとんどが水からできている材料です. 環境問題が叫ばれている昨今, このような研究はますます隆盛していくだろうなと肌で感じることができました.

(文責: 江尻 智森・化学専攻M2)

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数理創造プログラム

理研に着いた日の午後、我々は互いに自己紹介してからiTHEMSの研究スペースを見学させていただきました。そこに数多くのホワイトボードがあり、さまざまな数式と図が書いてありました。それは研究者の方々がある問題をめぐって議論されたあと残っていた足跡です。ここでは純粋数学だけでなく、理論科学と計算科学などの分野横断的な研究がなされています。数学を専攻しようとしている私は色々な科学の分野にも興味を持っており、「数理」で基礎科学の研究にも携わればと思います。この意味において、iTHEMSはまさに最適な場所でしょう。
それから、三上さんと難波さんがそれぞれ研究されているテーマについて紹介してくださいました。解析学と宇宙論の話でしたが、私にとって問題自体が大変興味深く、研究に使われている手法もかなり創造的だと思います。
私はまだ専門が決まっていない一回生ですが、iTHEMSの見学を経て数理の手法を用いたさまざまな分野の研究に関心を持つようになりました。とても勉強になった二日間でした。

(文責: 喬奕翔・理学部B1)

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