化学専攻・教授 深井 周也

 
 

6年前に下の子が保育園を卒園し、子育てが一段落して時間に少し余裕ができたので、運動不足解消にボルダリングを始めた。ボルダリングは比較的低い岩や壁をロープを付けずに登るスポーツであり、自然の岩や壁を登るものと持ち手(ホールド)を人工的につけた壁(人工壁)を登るものに分けられる。時間に余裕ができたとはいえ、週末の食事担当の私には岩場に行って登る時間はないため、専ら人工壁である。人工壁では指定されたホールドのみを利用してスタートからゴールまで移動する。移動経路は課題と呼ばれ、課題の難易度(グレード)は級と段で表現される。一番簡単な課題が8級、一番難しい課題が初段もしくは2段といった範囲でグレードを設定しているボルダリングジムが多い。各グレードの難しさであるが、初めて挑戦して6級の課題を二つ三つ登ることができれば、ジムのスタッフに「結構登れますね」と褒められる感じである。4級ではスタートさえ出来ない課題もあったりする。つまり、登る気満々で来ても初回はほとんどの課題が登れず、短時間で腕がパンパンになって家に帰ることになる。ここで、登れなくて悔しくて(でも、簡単な課題だろうと登れた達成感が忘れられなくて)もう一度挑戦する人と、登れないからつまらなくなってやめる人の二通りに分かれるが、スタッフの話では後者の割合が大きいようである。となると、ボルダリングをする人を増やすには、気持ちよく登ってもらうためにグレードを甘く設定すればよいと考えるかもしれないが、甘くしすぎるとグレードに見合う実力がつかなかったり、実力のある人は物足りなくて離れていくといったことが起こるようである。これ、以前から研究室の運営と少し似ているかもしれないと思っている。グレードをどのように設定するか、その匙加減が悩みどころである。