瀧口 あさひ

 

「リケジョ」、や「男女共同参画社会」等、女性を後押しする風潮がある。リケジョの浸透で高校から大学に進学するときに理系を選択する女子生徒は増えてきており、京大の女子学生も年々増えてきている。では大学を出た後はどうだろう。それぞれの専門分野で頑張ってきたからには、大学で学んだことを生かした職に就きたいというのは、多くの人が思うことだろう。「男女共同参画社会の実現に向けて、業績および資格に係わる評価が同等である場合には、女性を優先的に採用する」として、弱者集団の不利を是正するための優遇措置(アファーマティブ・アクション)に積極的な職場もある。このような取り組みを拡げ、男女が平等に働ける社会にしてほしい。

 

しかし、男女差におけるアファーマティブ・アクションは男性から見たら、女性ばかり支援されていて不公平と感じるかもしれない。だが、理系女性の就職状況はそれほどまでに厳しいのだ。

 

例えばこのような調査がある。同じ業績で名前が男性か女性かのみ異なる、大学教員職への応募書類をどのように評価するか比べたところ、業績が同じであるにも関わらず、男性の名前の応募書類の方が高評価であった。また、アカデミアの職だけでなく民間の理系職についても同様に男性の方が高評価であるという調査結果もある。つまり、採用する側に男女のバイアスがかかっていると結論付けられている。アファーマティブ・アクションには、女性に不利なこの就職状況を是正する意味がある。

 

しかし、なぜ採用する側にバイアスがかかってしまうのだろう。ある博士後期課程の女性は、今の研究に関連した就職先が見つからなかったら、現在お付き合いしている方と結婚して家庭に入るという。就職先がなかったら結婚するという考えは、女性にはあっても男性はなかなか至らない発想ではないだろうか。女性のこのような発想の背景には出産・育児が絡んでいると考えられる。博士後期課程修了時には浪人や留年をしていなくても27歳になっており、子供を持ちたいなら身体的な適齢期を過ぎないように意識しなければならない時期になっている。女性は、出産・育児で一時的であっても職を離れざるを得ない状況になるのだが、これは学位取得後数年というキャリア形成において重要な時期とも重なっている。そのため、女性も採用する側も慎重になってしまう傾向がある。

 

それでも、女性を採用するのは有意義である。例えばサルの社会学について研究していたグループでは、女性研究者の意見で大きく研究が進展したという。この進展には、サル社会はオスザルだけでなくメスザルからなっており、男性にはよく分からなかったサルの行動も女性視点だからこそ理解できたという背景がある。

 

女性にはキャリア形成が不利になる時期があるが、男女で職に就くチャンスを公平にする価値は十分にあると言える。リケジョの浸透で女性の理系への入り口は広がって来たので、アファーマティブ・アクションの拡充で出口も整備してほしい。