浜 直史

 

世界にペンギンは18 種前後いる。うち、目の上に黄色い冠羽のある姿が整髪剤のCM などで有名なイワトビペンギンは、亜南極圏付近の島々で繁殖しているが、個体数は急減している。近年、この種は2 または3 の別の種類に分けられようとしている。適切な分類は保全対策を立てる上でも重要だ。種の定義は1つではないが、「種の多様性」を求める上で、何を単位として保全を行うかを考えなくてはいけないからだ。

 

イワトビペンギンという種は元々繁殖地によって、亜種としてキタイワトビペンギン、ミナミイワトビペンギン、ヒガシイワトビペンギンに分けられていた。亜種は実際に体長や冠羽の長さなどで見分けられる。亜種間に雑種は生まれうるものの、自然界で交雑する可能性は低い。この亜種間の差が、別種といえるほど大きいかが問題だ。

 

体長の違いなどで特に異なる「キタ~」と他2 亜種との2 種とする分類がある。海水温の違い、繁殖地の緯度による体温調節機構の適応と考えられている。求愛の鳴き声の最大周波数も「キタ~」だけ明らかに低い。絶滅危惧種などを定め保全政策の根拠となるレッドリストは現在この分類を採用している。

 

他方、亜種間の遺伝子の差異が他の種との違いと同程度だとして、3 種に分ける研究もある。国際鳥類学会議は一時これを採用していたが、「ミナミ~」と「ヒガシ~」の実際の差は小さいとして2011 年に再度改め2 種とした。

 

国内では「キタ~」と「ミナミ~」が見られるが、保全のため交雑を避け、各動物園で一方のみが飼われている。「イワトビペンギン」とだけ銘打たれたペンギンを見て回れば、どこでどちらが飼われているか自分でも分類できるだろう。