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開催案内

気象データ解析とプログラミング

日時

2022年12月1日(木)16:45〜18:15

 

開催形式

対面(北部構内)とオンライン(Zoom)のハイブリッド
参加登録 https://forms.gle/ynBycY411e1FvuncA
登録されたアドレスに教室の場所もしくはZoomの接続情報を送付いたします。

 

講師

神山 翼 氏(お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 助教)

 

要旨

気象学(特に気象データ解析)とプログラミングの関係について概観する。気象学は,観測,理論,数値計算の三本柱によって構成されており,その橋渡しをするのが統計データ解析である。本講演では,気象学において目的に応じてどのようなプログラミング言語が選ばれる傾向にあるかを俯瞰した上で,その長所と短所を整理し,改善策があれば聴衆とともに議論したい。また,講演者が気象データ解析の教育における経験から,重要視すべきと考えるに至った点についても,主観的ではあるが時間の許す限り紹介したい。。

 

備考

◎本セミナーは京都大学・理化学研究所に在籍されている方はどなたでもご参加いただけます。
◎学内教育プログラムに関するイベントであるため、学外の方の登録は原則不可としております。ご登録いただきましてもリストより削除させていただくことがあります。
◎問い合わせ先:itami.masato.7u * kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)


開催報告

お茶の水女子大学の神山翼さんに「気象データ解析とプログラミング」というタイトルで講演していただきました。

気象学は観測・理論・数値計算の三本柱からなりますが、データ解析はそれら全てで利用されているそうです。気象学で最もプログラミングが大変なのは数値計算を主体とした研究なので、まずは大規模数値計算でどのような研究がされているのかを紹介していただきました。気象の大規模数値計算といえば、まず初めに思い浮かぶのが天気予報ですが、大気のダイナミクスを記述する流体方程式自体は確立しているものの、方程式の解はカオス的な振る舞いをするため、正確な予報は困難です。しかし、遅い自由度に着目した準地衡風方程式系を利用したり、初期値をずらしたシミュレーションの統計性をみるアンサンブル予報を利用することで、予報精度は年々上がってきており、計算機性能の向上も相まって2010年には5日後の上空気圧を90%程度の精度で推定できるようになったそうです。現在では解像度を細かくする方向で研究が進んでおり、雲や海の情報によって予報の精度がさらに上がることが期待できるそうです。

次に気象データ解析の方法を季節変動平均値の計算を例に紹介していただきました。プログラミング言語は作業の合計時間を考えて選ぶことが重要で、計算が速いFortranよりも、ライブラリが充実していてコーディングが平易なPythonを利用した方が良い場合もあり、若手を中心にPython利用者が増えていると伺いました。ちなみに、米国ではMatlab、欧州ではR、アジアではFortranが長らく主流として使われてきたそうです。

最後に神山さんの最近の研究である黒潮とメキシコ湾流の同期現象について紹介していただきました。黒潮とメキシコ湾流は遠く離れていますが、偏西風ジェット気流を介して情報を交換することで、海面水温が同期することを発見されたそうです。全球気候モデルのシミュレーションを行ったところ、高解像度にして海洋渦の一部を再現することで初めて顕著な境界流同期が現れたそうです。この結果は、中緯度での海面水温の変化がジェット気流に影響を与えることも示唆しており、重要な結果であると感じました。

講演中や講演後に学生から非常に多くの質問が出て、活発な議論が行われました。
(文責:伊丹將人)