目次


開催案内

日時

2025年4月25日(金)14:45〜18:30
 

開催場所

理学研究科セミナーハウス(対面のみ)

プログラム

14:45〜15:00

ティータイムディスカッション

15:00〜16:00

第28回MACSコロキウム

『折り紙にひそむ数学:カライドサイクルの幾何学』

 講演者:鍛冶静雄(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 教授 兼 京都大学理学研究科附属サイエンス連携探索センター 教授)

カライドサイクルという折り紙をご存知でしょうか.環状につながった四面体をクルクルと滑らかに回すことができ,不思議な楽しさがあります.一見ただのおもちゃのようなカライドサイクルですが,この動きの背後には幾何学や機構学に関係する豊かな構造が潜んでいることが分かってきました.この講演では,「なぜ回るの?」という素朴な疑問から拡がった研究を,未解決問題を交えながら紹介します.

16:15~17:20

 

2025年度MACS学生説明会

スタディグループ(SG)の代表教員・参加教員による企画説明(各5分)

 

1. データ同化の数理と応用:理論モデルとデータをつなぐデータサイエンス

代表教員:坂上 貴之(数学・数理解析専攻)

2. 物理と生物をつなぐ

代表教員:佐々 真一(物理学・宇宙物理学専攻)

3. 生命のダイナミクス:本物を観て(観察)そして考える(数理)

代表教員:高橋 淑子(生物科学専攻)

4. 宇宙医学:宇宙滞在時における生理学・医学的観点からの考察

代表教員:寺田 昌弘(サイエンス連携探索センター)

5. 理化学研究所と京大MACSで築く数理交流プラットフォーム

代表教員:石川 勲 (サイエンス連携探索センター)

6. 自然現象の構造把握:点から線、線から面へ

代表教員:松本 剛(物理学・宇宙物理学専攻)

7. 科学技術をめぐる倫理的・法的・社会的課題

代表教員:清水 雄也(サイエンス連携探索センター)

8. 学習物理学:機械学習と理学の融合

代表教員:棚橋 典大 (学習物理学特別講座)

9. XR で見る・3D で触る先端科学

代表教員:稲生 啓行(数学・数理解析専攻)

10. みんなで学ぶ数理物理

代表教員:楠岡 誠一郎(数学・数理解析専攻)

11. 暗号理論の数理と社会実装

代表教員:伊丹 將人(サイエンス連携探索センター)

12. 外れ値でみる理学

代表教員:宮路 智⾏(数学・数理解析専攻)

13. 誰も見たことのないものを見るための技術

代表教員:冨田 夏希(物理学・宇宙物理学専攻)

17:30〜18:30

継続討論会   コロキウム講演者・SG参加教員との自由な情報交換会

 

今年度のSGの情報は以下のHPから得ることができます。
http://www.sci.kyoto-u.ac.jp/ja/academics/programs/macs/sg/

備考

  • 本コロキウムは理学部・理学研究科の学生・教職員が対象ですが、京都大学・理化学研究所に在籍されている方はどなたでもご参加いただけます。
  • SGの参加対象は主に理学部・理学研究科の学生が参加対象です。それ以外の学生の登録も可能ですが、 参加希望者多数の場合は調整の可能性があります。
  • 問い合わせ先:macs * sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)

開催報告

第28回MACSコロキウムは、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所兼京都大学理学研究科附属サイエンス連携探索センター所属の鍛冶静雄先生に「折り紙にひそむ数学:カライドサイクルの幾何学」というタイトルで講演していただきました。

講演はリンク機構・からくりの紹介から始まりました。リンク機構とは、いくつかの剛体(変形しない物体)がジョイント(稼働部品)で連なっており、全体として動けるもののことで、動力の形態を変換する際に利用されているそうです。具体例として、蒸気機関で重要や役割を果たしている、上下運動を円運動に変換するリンク機構について説明していただきました。また、人体の中でも様々なところでリンク機構が利用されており、例えば顎はリンク機構とみなせるとのことでした。

続いて、パンタグラフというシンプルな例で、リンク機構の数学的な定式化について説明していただきました。リンク機構は、ジョイントを頂点、剛体を辺とみなすとグラフになるため、配置空間は辺の長さに関する拘束付きの頂点座標の集合として表現できます。リンク機構の各状態は、連立方程式の解と対応しており、リンク機構の運動は1次元の解の族とみなせます。このような定式化と関連する有名な定理として、「平面上の有界な代数曲線はリンク機構によって描くことができる」というKempe’s universality theoremを紹介していただきました。

最後に、カライドサイクルの幾何学について説明していただきました。n個の合同な等面四面体をヒンジ(ジョイント)で繋いだリンク機構をn-カライドサイクルとして定義します。隣り合うヒンジの中点を結ぶ直線は、ヒンジ方向の単位ベクトルの外積で得られるため、ヒンジ方向の全ての単位ベクトルを指定すればn-カライドサイクルの状態が定まります。このような定式化のもとで重要な問いは、〈Q1〉n-カレイドサイクルはどのような条件のときに存在するのか?(解の集合は空集合ではないか?) 〈Q2〉n-カレイドサイクルは動くのか?(解の集合の空間次元が1以上か?) の2つです。鍛冶先生は、まずQ1を仮定してQ2を解決し、次にQ2で得られた解に基づいてQ1を解決したとのことでした。鍵となったのは、隣り合うヒンジのなす角と関連する量が、適切な極限のもとでmodified Korteweg-de Vries方程式に従うということだったそうです。

講演後の質疑応答は、解のパラメータ空間の次元が大きい場合や、より複雑なおもちゃの場合についての議論で大いに盛り上がりました。

(文責:伊丹將人)