表面での爆発から星の死への旅立ち

表面での爆発から星の死への旅立ち

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2017/11/10更新

前田啓一 本研究科物理学・宇宙物理学専攻准教授、姜継安 東京大学博士課程学生、土居守 同教授、茂山俊和 同准教授らの研究グループは、国立天文台、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構などと共同で、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC:ハイパー・シュプリーム・カム)を用いた観測により、爆発後1日以内のIa型超新星を捉えることに成功しました。本研究はIa型超新星の爆発機構を解明する第一歩であり、Ia型超新星を宇宙論的距離測定の標準光源として用いる精度を高めることにも役立つと期待されます。

 

本研究成果は、2017年10月5日午前2時に英国の科学誌「Nature」に掲載されました。

研究者からのコメント

 この観測プロジェクト、もともとは白色矮星の爆発によって生じた爆風が連星の相手に衝突して短時間光る現象を探す目的で開始したものでした。世界最高性能のすばる望遠鏡と広視野カメラHSCにより、爆発後1日以内の超新星を見つけてくるという非常に困難な観測が実現しましたが、出てきたデータは予想に反するものばかり。さんざん悩みましたが「ヘリウム外層の核融合による引き金」というアイデアを思いついてからは、面白いようにすべての観測データが自然と説明できました。

 

 今回の結果は、爆発直後の超新星の観測データという新しいデータにより、全く新しい知見が得られることを示す良い例となりました。すばる望遠鏡による観測の推進はもちろんのこと、京都大学が岡山天体物理観測所に建設中の3.8メートル望遠鏡なども駆使して、超新星をはじめとする様々な爆発天体現象の解明に向けた研究を推進していきたいと思っています。

概要

Ia型と呼ばれる超新星は、爆発の規模がほぼ同じでピーク時の明るさもよく揃っており、「宇宙の標準光源」とも呼ばれる性質を持っています。宇宙の様々な場所で発生したIa型超新星を観測し、宇宙の加速膨張を発見した二つの研究グループが2011年のノーベル物理学賞に輝くなど、Ia型超新星は宇宙の歴史と未来を知る上で重要な役割を果たしています。その重要性にも関わらず、Ia型超新星に至る進化と爆発過程には多くの謎が残されています。白色矮星と呼ばれる特殊な星の核反応暴走爆発であることが知られていますが、そもそもどのように核反応暴走の引き金が引かれるかの詳細がまだ解明されていません。

 

今回、本研究グループは、すばる望遠鏡に搭載されたHSCを用いて爆発後1日以内の超新星を捉えることに成功しました。この観測結果から、この超新星は、これまでに観測されてきたIa型超新星の変化から推測されていたよりもずっと早い時期に明るくなっていたことがわかりました。さらにこのIa型超新星の明るさと色の時間変化を詳細に調べると、これまでに考えられていた理論モデルで説明できないことも明らかになりました。

 

本研究グループは、スーパーコンピュータを用いて詳しい理論計算を行い、この超新星の正体を解明しました。白色矮星に降り積もったヘリウムの層の最深部で激しい核融合反応が始まり、その衝撃波が中心に伝播して星全体が爆発するという機構でその観測的特徴が良く説明できることがわかりました。この機構はIa型超新星の爆発機構として提案されていた説の一つですが、それに対する最初の確たる観測的証拠であり、極めて重要な成果です。

 

以上の成果は、Ia型超新星の詳しい爆発機構が観測データを用いて立証された初めての例です。このような爆発機構が一部の超新星のみで働くのか、あるいは普遍的な機構なのかを解明することが今後の課題となります。本研究グループは、今後更に観測を進めることで多くの超新星を検出し、その中からより初期段階の超新星を探し出す予定です。

図:白色矮星に降り積もったヘリウムが星の表面で爆発し、白色矮星の中心の核融合反応に点火した模様を表す想像図
(提供:東京大学大学院理学系研究科)
 

詳細は、以下のページをご覧ください。