化学専攻では、9月24日から26日の3日間(13:00~17:00)に、1、2回生を対象とした(系統録前なら3回生以上も可)体験学習プログラムを開催しました。

 

希望した研究室に配属された1、2回生が、最前線の研究現場で活躍している教員や先輩と交流しながら、準備された3日間の教育プログラムに沿って化学系の研究室ライフを疑似体験しました。

 

各研究室のテーマ

有機化学研究室 :遷移金属触媒の合成と反応
有機合成化学研究室 :ハッカ香の成分の合成
集合有機分子機能研究室 :色彩豊かな巨大芳香族分子の合成
光物理化学研究室 :レーザー分子分光イメージングで見る光合成生物の機能分化
物理化学研究室 :フェムト秒レーザーと光電子分光による化学反応のリアルタイム観測
分子分光学研究室 :有機固体の電子励起状態ダイナミクス
理論化学研究室 :電子状態理論ハンズオン~量子コンピュータで描く化学結合~
金相学研究室 :高温超伝導体YBCO及びBi-2223の合成と物性測定
固体物性化学研究室 :合金ナノ粒子の合成と同定
表面化学研究室 :固体表面と分子・原子の相互作用
分子構造化学研究室 :核磁気共鳴(NMR)と原子核スピンダイナミクス
分子性材料研究室 :電気を流す有機物
生物化学研究室 :核酸を中心としたケミカルバイオロジー

今回は、そのなかのひとつ、集合有機分子機能研究室の「色彩豊かな巨大芳香族分子の合成」をテーマとした体験学習プログラムをご紹介します。

 

この研究室では、ポルフィリンという色素分子を中心に、新規ポルフィリン類縁体(少し構造を変化させたもの)を合成しています。それらの新規物質の基礎的な物性を評価し、新たな機能性分子としてさらなる分子設計・組織化を図り、ポルフィリン類縁体の未知の世界を開拓することを研究の目的としています。

 

植物の葉っぱが緑色をしているのもヒトの血液が赤いのもこのポルフィリン類縁体の色であり、まさに「生命の色素」です。

 

また全く新しい機能をもつ色素分子の発見により、世界に先駆けてその特異な機能を開拓しています。

 

体験学習プログラムの内容は次のとおりです。

 
 
 

*ピロール環4個からなるポルフィリンに対して、5個以上のピロール環から構成されるポルフィリン類縁体の総称。

  1. はじめに
  2. 合成について
  3. 実験
    1. 一日目 ― 環拡張ポルフィリンの合成
    2. 二日目 ― 環拡張ポルフィリンの精製
    3. 三日目 ― スペクトルなどの各種分析、まとめ
  4. 用語説明

1日目のはじめに、齊藤尚平准教授より有機合成化学について説明がありました。

 
 

白衣を着用し、防具メガネと手袋をもって実験室へ出発です。

 

参加した1、2回生は二人一組になり、各TA(Teaching Assistant)の先輩のもとで指導を受けながら、3日間に渡り実験を進めていきました。

 

薄層クロマトグラフィー(TLC)により、ヘキサフィリンの生成を確認(1日目)。

 

反応終了後、アルミナに溶液を通し、不純物を除去(2日目)。

 

超音波振動によってフラスコ内の固体を溶解(2日目)。

 

シリカゲルカラムクロマトグラフィーの準備(2日目)。

 

様々な環拡張ポルフィリンの単結晶X線解析の結果を見て、構造を確認(3日目)。

 

単離されたヘキサフィリンの重量を測定(3日目)。

 

ヘキサフィリンの還元に伴う溶液色の変化を観察(3日目)。

3日目の実験を終えた後、体験学習プログラムの内容のまとめとして、齊藤准教授による「モノの色は何で決まる?~素朴な疑問から最先端の科学へ~」の講義を通じさらに理解を深めました。

 

最後に、参加者全員と、指導に当たった各研究室の教員や先輩との懇親会が開かれ、終了を迎えました。