山方 優子

 

人類と音楽は切っても切り離せない関係がある。その歴史は紀元前に遡る。何をもって音楽と呼ぶのかにはいくつもの学説があるが、基本的には、石器時代に木や石を打ち鳴らした「リズム」、そして歌声による「メロディー」が生まれ、それらが合わさったものが「音楽」だと考えられている。

 

音楽を楽しむ行動はあらゆる文化圏で共通して見られる。しかし、人類以外の動物には音楽がほとんど存在しない。特に、人類に一番近い霊長類でさえもメロディーを奏でる種が少ないことから、人類は独自の進化により音楽を獲得したのだと考えられている。ところで、一部の鳥類などでは、人類と同じように「メロディー」を奏でて意思疎通する動物がいるが、彼らは果たして人類と同じように「リズム」をも感じて「音楽」を奏でていると言えるのだろうか。

 

マサチューセッツ州にあるタフツ大学の認知神経科学者アニルド・パテル氏は、オウムを用いて次のような研究を行った。オウムは人間の言葉や周囲の音、つまり「メロディー」を真似することでよく知られている。そこで、ある音楽に合わせて体を動かすようトレーニングしたオウムが、音楽を速めたり遅めたりするのに合わせて踊りを調節できるかどうかの観察、つまり、「リズム」感の有無を観察する実験を行った。この柔軟性こそ、人類のようにメロディーとリズムを追う能力の有無、つまり「音楽」を理解できているとする。観察の結果、オウムはその能力を有することが分かった。

 

つまり、オウムなどのように音をまねる能力に長けている動物は音楽を奏でる能力があることが分かった。しかし、動作をまねる能力の高いチンパンジーはあるリズムには同調できるが柔軟性は示さなかったことから、音楽を理解していないということが他の研究結果で報告されている。