廣田 誠子

 

刺身やツナで親しまれるマグロが近年減りつつあります。ツナ缶の材料として世界の全マグロ類漁獲高の65%(約120 万トン)を占めるキハダマグロも例外ではありません。クロマグロでの養殖技術をもつ近畿大学の澤田教授らは、マグロ消費国で漁獲高の減少を心配するパナマ政府の要請を受けて、パナマでのキハダマグロ養殖技術確立に向けた共同研究に乗り出しました。

 

キハダとクロマグロとではふ化のタイミングや成長の速度、エサや好む水温など様々な事がちがっているため、澤田教授らは一から試行錯誤を繰り返しました。マグロ類では取り込まれた栄養のほとんどが成長にまわり、生命維持には必要最低限しか使われないため、エサの量や、成長に必要な環境設定のタイミング、水温などのほんの少しの違いが致命的になってしまうのです。

 

例えば、ふ化後すぐの稚魚が水面にとらえられ衰弱死してしまうことを防ぐために水面に油膜を作りますが、稚魚が大きくなって浮き袋を形成する時には水面で空気を飲み込む必要があるため、適切なタイミングで油膜除去を行わなければなりません。キハダマグロに必要な細かい環境設定やそのタイミングを見極める必要がありました。

 

プロジェクトを2010 年に開始して以来、なんども全滅を繰り返し、2015 年の9 月、ついに卵から30cm サイズまで育てることに成功しました。この成功は完全養殖への第一歩であり、2 年後の完全養殖を澤田教授らは目指しています。