スタディグループ([SG1]-[SG9])

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[SG1]データ同化の数理と応用:理論モデルとデータをつなぐデータサイエンス

図1: 理研京大データ同化ワークショップ (2019年12月24日)


図2: データ同化講義のポスター

 

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活動報告

活動目的・内容

近年発展のめざましい数理統計学分野の1つに「データ同化」がある.データ同化は,現象の理論数理モデルのシミュレーション結果に本質的に含まれる予測誤差を観測データによって補正を行い,その予測力を向上させる手法である.例えば現在の数値天気予報における予測可能期間の向上はデータ同化手法のもたらしたものである.一方,理学研究の各分野においては実験・観測によるデータ研究と理論モデルによる研究がその両輪となっており,現代の数理統計的手法によって,精密化・大規模化するデータを有益に利用して理論モデルに組み込む新しいスタイルの研究が可能になりつつある.また,企業などにおいても長年蓄積された技術の理論モデルと計測データとの高度融合が望まれており,そのような開発を担う高度な職業人の輩出も大学にもとめられている. このような状況に対して,昨年に引き続き,理学における様々なデータと数理モデルを融合するデータ同化の基礎と応用について講義と実習およびその後のフォローアップのセミナーやチュートリアルを軸とした年間のコースを実施し,データ同化を用いた各理学分野の新研究の創出,理学研究科の修士/博士学生の新しいキャリアパス構築を目指す.講義型SGとして週一回の講義(前期/後期)を開講.また夏冬にデータ同化研究会を理研と京大で一回ずつ開催,12月にはデータ同化スクールなども計画している.

 

活動成果・自己評価

活動成果:平成31年度の活動として,前期・後期に講義「データ同化A・B」を実施した.前期のデータ同化Aは19名(名古屋大学からの特別聴講生1名を含む)が履修し,データ同化の理論と応用について,その入門から基礎を学んだ.低次元のカオス力学系モデルを使った実習課題に取り組むことで,実際の問題に適用するために必要な実践的な基礎技術を習得した.後期のデータ同化Bは5名(名古屋大学からの特別聴講生1名を含む)が履修し,前期で履修した内容を前提とした上で,データ同化の理論と応用についてその基礎を究め,実際の応用力を養った.
自己評価:前期の講義では昨年度に比べて受講生が倍増し,昨年度は不開講とした後期の講義も今年度は開講して5名が受講した。昨年度と同様、参加者の意欲は高く,学習の効果は上がった。学生がデータ同化のような分野横断型の分野で研究し学位取得を目指す際に,大学院での受け皿の問題が依然残っていることが認識された.

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
坂上 貴之(代表教員) 数学・数理解析専攻 教授
余田 成男 地球惑星科学専攻   教授
三好 建正 理化学研究所 チームリーダー連携教授
大塚 成徳 理化学研究所 研究員
小槻 峻司 理化学研究所 研究員
その他:学部生・院生19名(前期)、5名(後期)
 
 

[SG2]VRで見る・3Dで触る先端科学

活動報告

活動目的・内容

このSGでは、数理科学・自然科学に表われる3次元的な対象をVR機器や3Dプリンタを用いて観察する為の手法を学び、実際に作品を作って観察する。
 
「VR元年」と呼ばれる2016年以来、一般向けに様々なVR機器装置が登場し、今までにない現実感・没入感をもって仮想現実の世界を楽しむことができるようになった。もちろん数理科学・自然科学においても、様々な分野に現れる3次元的な対象を観察して理解することは重要であり、紙やディスプレイなどで2次元に投影したものを見るだけでは十分に理解できないことも多い。そのような複雑な対象を、没入型VR装置を用いてその中に入りこんで観察したり、3Dプリンタで実際に出力して触ってみたりして、対象をより身近に体感し、新しい構造や現象を発見したり、より深く理解する為の手法を学ぶ。
 
具体的には、まずガイダンスを行い、過去の作品を含めたいくつかのデモやサンプルを実際に没入型VR装置で体験してもらう。また簡単な3Dモデルを作成しVR装置で観察する方法を学ぶ。その上で、流体力学、分子構造やフラクタル、その他何でもいいので、参加者自身が観察したい3次元(以上)の観察したい対象(物体・アニメーションなど)を、みんなで集まって相談しながら実際に計算したり実験データを整理したりして出力し、没入型VR装置を用いて実際に観察する。標準的な方法だけでは観察が難しいものについては、より現象を理解しやすい形で表現し可視化する方法について探求する。
 
3Dプリンタで出力できるような対象は実際に出力し、手にとって観察することもできる。

 

活動成果・自己評価

昨年度は時間が足りない学生が多かったので、今年度は夏休み以外にも、月1〜2回の活動を行うことで活動時間を確保しようと思ったが、予想外に参加者が少なかった。また昨年度まで使っていたツールキットが一時期開発停止になっていた為、VRアプリを作る手間が増えてしまい、そのことも重なって、参加していた学生は分子モデルなどの基本的な3Dモデルの作り方、UnityでのゲームやVRアプリの作り方を学ぶだけでほとんど終わってしまった。来年度は前期は時間をかけて一緒にVRアプリの作り方を学ぶようにしたり、外部の専門家を招いて講演をしてもらうなどして活性化を図りたいと考えている。
稲生は4次元のVRによる可視化の研究プロジェクトに参加しており、この活動時間も利用して、このプロジェクトとも関連したいくつかの4次元のVRアプリ(両眼視差と運動視差を異なる奥行きに割り当てるデモ、4次元空間の1点を指し示すデモなど)を作った。また3Dプリンタで石塚助教が昨年作ったClebsch曲面や、2変数関数のグラフなどに厚みをつけて出力した。教職員の側ではVRアプリや3D印刷の経験は少しずつ蓄積されており、今後の活動に生かしたいと考えている。

 

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
稲生 啓行(代表教員) 数学・数理解析専攻 准教授
松本 剛 物理学・宇宙物理学専攻   助教
市川 正敏 物理学・宇宙物理学専攻 講師
石塚 裕大 数学・数理解析専攻 MACS特定助教
宮路 智行 数学・数理解析専攻 准教授
中野 直人 理学研究科 連携講師
佐々木 洋平 摂南大学理工学部 講師
阿部 邦美 化学専攻 技術専門員
山本 隆司 生物科学専攻 技術専門職員
渡邊 絵美理 生物科学専攻 M1
藤田 陽子 その他(理学研究科以外など) M2
立木 佑宇人 その他(理学研究科以外など) M1
藤山 鴻希 その他(理学研究科以外など) B2
宇都宮 翔大 その他(理学研究科以外など) B1
佐藤 慶暉 その他(理学研究科以外など) B2
吉永 彩夏 生物科学専攻 M1
磯田 珠奈子 生物科学専攻 D1
中岡 育也 化学専攻 M1
吉田 純生 生物科学専攻 M1
 

[SG3]本物を見て考えよう!:脊椎動物の胚観察から数理の可能性を探る

図1:前期実習で行った細胞間隙の可視化
緑と赤はそれぞれ細胞間隙および細胞膜を可視化する試薬。赤のシグナルは前後軸でどこでもほぼ一定だが、緑のシグナルは体軸後方でより強いシグナルを示す。つまり、体軸後方で細胞間隙が多い(=液体状組織)ことが示唆された。

 

図2:後期実習で行ったゲル移植実験
トリ胚内の特定組織を部分的に除去した上で、蛍光ラベルされたアルギン酸ゲルを移植した。時間経過を追うことで、周囲からゲルにかかる力(もしくはゲル部分の組織が周囲にかけている力)を可視化することができた。

 

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活動報告

活動目的・内容

本企画では前年度同様、数理と生物科学との分野横断の実例を学びつつ、脊椎動物の生きた胚を観察し、発生過程で起こる様々な現象について数理モデルで説明できる可能性を議論する。具体的には、発生現象を数理的に解析した研究論文を輪読すると共に、その発生現象の「実物」を観察し、数理と生物科学との分野横断の実例を学ぶ。扱う生物は、発生過程を直接観察でき、かつ未経験者でも扱い易いニワトリ胚を予定している。
本年度注目するトピックは、組織の「硬さ」や組織にかかる「力」が発生現象に与える影響についてであり、脊椎動物の体幹部(体軸)の伸長に関する論文[1] [2]を輪読する。これらの論文では、体軸を構成する細胞集団の液体状から固体状への状態変化や周辺組織からかかる力が体軸伸長を促進することを明らかにしている。加えて、トリ胚を用いた体軸伸長の観察実験などを行う予定である。
[1] “A fluid-to-solid jamming transition underlies vertebrate body axis elongation, A Mongera et al., Nature (2018)”
[2] “Mechanical Coupling Coordinates the Co-elongation of Axial and Paraxial Tissues in Avian Embryos, F Xiong et al., bioRxiv (2018)”

 

活動成果・自己評価

前期は、上記[1]の論文を通して、体軸伸長における組織の液体-固体ジャミング転移が果たす役割を学んだ。トリ胚実習では、組織が液体/固体状の判断指標となる「細胞間隙」の可視化(図1)や薬剤処理による体軸伸長への影響解析を行った。細胞間隙の観察には成功した一方、薬剤処理については検証した濃度範囲では体軸影響への影響は観察されなかった。後者に関しては、論文で出てくるデータの裏に数多くの予備実験が必要なことを参加学生たちに実感させる上で役に立ったと思う(追加実験も今後検討している)。
後期は、上記[2]の論文を通して、体軸伸長における組織間の物理的な相互作用の重要性を学んだ。トリ胚実習では、アルギン酸ナトリウム(二価の陽イオン存在下で凝固する性質を持つ)ゲルの移植(図2)を用いた組織にかかる力の可視化実験などを行い、論文に書かれている内容を自分たちの手で再現することに成功した。予想外の発見として、アルギン酸ゲルは、ゲル内に薬剤や鉄などを簡単に混ぜられる応用性の高い実験ツールだったため、来年度のSGにこのゲルを活用し、既知の結果の再現からもう一歩踏み込んだ実習およびSG活動を行いたいと考えている。
この他、本SGでは参加教員らとの共催で4回の外部セミナーを開催した。特に4月と11月に開催されたセミナーやミニシンポジウムでは細胞挙動や組織形態形成における物理的な要素の役割を解析した講演が行われ、数理と生物科学との分野横断的研究の最前線の話を聞くことができた。

 

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
高瀬 悠太(代表教員) 生物科学専攻 MACS特定助教
荒木 武昭 物理学・宇宙物理学専攻   准教授
國府 寛司 数学・数理解析専攻 教授
平島 剛志 医学研究科 講師
高橋 淑子 生物科学専攻 教授
中牟田 旭 その他(理学研究科以外など) B1
司 悠真 生物科学専攻 B4
村上 吉朗 その他(理学研究科以外など) B2
榊原 美緒里 その他(理学研究科以外など) B1
東島 いずみ その他(理学研究科以外など) B2
石田 祐 生物科学専攻 B3
 

[SG4]理学における代数的手法

図1:外部セミナー「微分代数を用いたモデル解析のシステムバイオロジーへの応用」のポスター

 

図2, 3 : SG成果発表会の発表スライドより

 

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活動報告

活動目的・内容

グレブナー基底は連立多項式方程式を取り扱う、非常に普遍的なアルゴリズム(あるいはそれを提供する概念)である。本 SG では、グレブナー基底と統計を中心としたいくつかの話題を通じて、代数的な考え方や手法について学習し、その用法や計算機を用いた計算、そして自然科学においてあり得る応用について議論することが目標である。
具体的には、まず環論および統計において現れる各種の数学的概念を、計算機を用いた実習を通して学ぶ。その後、計算代数統計の初歩的なテキストの輪講を主軸として、発展や応用について議論する予定である。数学的概念の学習の際にも、理学の話題を提供することで動機を提供したいと考えている。

テキスト
青木 敏「計算代数統計 グレブナー基底と実験計画法」

 

活動成果・自己評価

登録者は当初の想定より多く、教員5人、学生4名で行われた。理学部以外の参加者や、代数的な考え方に慣れていない参加者が確認できた。このため、前期はそれらの参加者に合わせる形で、多項式環やイデアル、グレブナー基底などの概念を学習した。使用した教科書は当初の予定通り青木氏の『計算代数統計』である。一方で代数的な取り扱いに比較的慣れた参加者がいることも想定して、参考文献を補い、また外部セミナーで神戸大学の小松瑞果氏に微分代数を用いた研究について紹介していただいた。後期は前期の知識をもとに実習を中心に講義を行い、残った参加者にはひとまずのグレブナー基底の利用法と、その計算ソフトの使用を教えることができた。ゆくゆくは参加者の問題意識につながることを期待したい。
反省点としては、前期のセミナーに少し時間を取りすぎたこと、および実習と輪講の並行した実施ができなかったことが挙げられる。利用したサービスについてのこちら側の準備不足が目立つ形となった。また、いくつかの素朴な問題意識は出たが、実質的な研究にはつながっていない。理学から少し目を離して、工学の非線形制御理論などの方面からも研究を紹介すると、より多くの問題意識に繋げられたかもしれないと感じている。

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
石塚 裕大(代表教員) 数学・数理解析専攻 MACS特定助教
林 重彦 化学専攻   教授
太田 洋輝 物理学・宇宙物理学専攻 MACS特定助教
中野 直人 理学研究科 連携講師
塩崎 謙 物理学・宇宙物理学専攻 助教
太田 優希 その他(理学研究科以外など) B3
李 耀漢 化学専攻 研究生
別所 拓実 物理学・宇宙物理学専攻 D1
高橋 直也 数学・数理解析専攻 M2
 

[SG6]自然科学の対象としての経済への数理的アプローチ

図1: セミナーの様子。渡辺有祐さん(Amazon.com, Inc. Seattle)による「巨大テック企業は機械学習を如何に活用しているのか」

 

図2: セミナーの様子。久保健さん (Zettant, Inc.)さんによる「ブロックチェーンに何を夢見るか」

 
 

図3: セミナーの様子。芝野恭平さん (東京大学工学研究科)による「ブロックチェーンの基礎と応用事例の紹介」


 

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活動報告

活動目的・内容

経済への現代的な数理的アプローチを学ぶため、統計物理学を基礎としたテキスト*を用いて輪講を行う。それに加えて後期には参加者の興味次第では、ブロックチェーンの数理的基礎から社会での活用例題も学び、それらに関連したプログラミングに取り組むことも考えている。(必要なプログラミング技能は想定しないが、プログラミング環境を自前で用意することは想定)

このSGの目標は、経済への数理的アプローチを例題として、自然科学の方法論やアルゴリズムについて学び、異なる専攻を持つ参加者が交流するための共通言語を身につけることである。これを機に主体的に未知の分野を探検しようとする学生に適しているだろう。

 

 

活動成果・自己評価

前期は、[J-P. Bouchaud et al, “Trades, Quotes and Prices: Financial Markets Under the Microscope” Cambridge Univ. Press, 2018]を参加メンバーで輪講し、為替市場で登場するLimit order bookのダイナミクスについての基礎的知識を学んだ。後期は、渡辺有祐さん(Amazon.com, Inc. Seattle)に「巨大テック企業は機械学習を如何に活用しているのか」というタイトルで9月の2日間の集中講義を行っていただき、機械学習が実際の経済活動の最前線でどのように使われているか、その当事者から直接学ぶことができた。
後期は、各メンバーが各々の興味に応じて経済に関連するような論文を見つけてきて他のメンバーに紹介する活動を行った。結果としては概ね、ブロックチェーン関連論文についての発表が多かった。それと関連して、10月と2月にそれぞれ久保健さん(Zettant Inc.)に「ブロックチェーンに何を夢見るか」、芝野恭平さん(東京大学工学研究科)に「ブロックチェーンの基礎と応用事例の紹介」というタイトルの2コマ連続セミナーでお話しいただいた。最終的に、ブロックチェーン周りの研究トピックについて、参加メンバー間で研究課題の可能性について気軽に意見交換する環境になったので、最低限のSGの到達目標は達成した。
実際の研究に移行することはできなかったが個人的にはこのSG以降も、特にブロックチェーン関連話題に関して研究トピックのストックの一つとして試行錯誤できればと考えている。

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
太田 洋輝(代表教員) 物理学・宇宙物理学専攻 MACS特定助教
石塚 裕大 数学・数理解析専攻 MACS特定助教
伊丹 將人  物理学・宇宙物理学専攻 研究員
上田仁彦 情報学研究科 教員
笠間 淳平 数学・数理解析専攻 M1
金澤 晴樹 その他(理学研究科以外など) B2
梅本 滉嗣 物理学・宇宙物理学専攻 D2
日浦 健 物理学・宇宙物理学専攻 D1
 

[SG7]脳科学に関わる数理

図 1: シンポジウムの様子。国際シンポジウム「Computational Principles in Active Perception and Reinforcement Learning in the Brain」

活動報告

活動目的・内容

2019年度は、下記の項目を行った。 今回の特色は、輪読だけにとどまらず、学生自らモデリングを行い、それを計算機で実装させることで、 脳のダイナミックスに対してよりリアルな感触を得ることを目標とした。

(1) 脳の学習理論としての統計的推論モデルおよび自由エネルギー原理に注目して、 連論文の輪読会を行った。
(2) コンピュータ上でアルゴリズムを実装することで理解を深め、 それに基づく神経科学的な課題についての議論を行った。
(3) 外部講師9名、内部講師2名による国際シンポジウムを開催した。 海外からは著名なDaniel Braun教授(Ulm University)を招聘し、 意思決定に関する連続講義を行って頂いた。 さらに、その講演内容を理解するための補足セミナーを事前に開催し、事前準備学習を行った。

 

 

活動成果・自己評価

最近神経科学分野で注目を浴びている 意思決定の理論である「自由エネルギー原理」を理解することを目的に、 前期はその準備のためのSGを開催した。 自由エネルギー原理は機械学習の変分ベイズ法を基礎としているため、 「パターン認識と機械学習(Christopher M. Bishop)」の輪読会を行った。 まず初めの4回は参加教員(本田・鈴木・小島)による講義とし、 効率的に確率分布・回帰・判別・EMアルゴリズムの基礎を学んだ。 その後、EMアルゴリズムの応用と変分ベイズを参加学生が発表する形式で、輪読会を3回行った。 昨年度までの輪読会は学生らによる発表を主としていたため、 EMアルゴリズムにも到達できずに1年間が過ぎてしまっていたが、 今年度は教員による講義を設けることで、高いレベルにもっていくことができた。 後期は、前期で学んだ知識をもとに自由エネルギー原理に関する review論文(Buckley CL et al., J Math Psychol, 2017)の勉強会を2回開催した。 3月には、国内外の著名な研究者9名を招聘し、 意思決定の神経メカニズムに関する国際シンポジウム 「Computational Principles in Active Perception and Reinforcement Learning in the Brain」 (https://sites.google.com/view/active-perception-rl/)を開催した (下写真参照)。 特に、基調講演者であるDaniel Braun教授(ドイツUlm University)には、 計4.5時間に渡り自由エネルギー原理とは別のアプローチであるが 数学的に関連のある有意義な講義をして頂いた。

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
加藤 毅(代表教員) 数学・数理解析専攻 教授
篠本 滋 物理学・宇宙物理学専攻 准教授
本田 直樹 生命科学研究科 准教授
小島 諒介 医学研究科 特定助教
鈴木 裕輔 生命科学研究科 特定助教
松田 道行 生命科学研究科・医学研究科 教授
寺井 健太 生命科学研究科 准教授
山際 宏明 数学・数理解析専攻 B5
南里 航 その他(理学研究科以外など) B3
榊原 美緒里 その他(理学研究科以外など) B1
兎子尾 理貴 物理学・宇宙物理学専攻 M2
東 玲於 その他(理学研究科以外など) B2
渡邊 絵美理 生物科学専攻 M1
近藤 尚紀 数学・数理解析専攻 B3
宇都宮 翔大 その他(理学研究科以外など) B1
司 怜央 その他(理学研究科以外など) B2
大熊 信之 その他(理学研究科以外など) 学術振興会特別研究員(PD)
糀谷 暁 化学専攻 M1
 

[SG8]動的秩序の発展を追う

図1: ドローンで撮影した写真から得た砂丘面高さの関数。座標の単位はいずれもメートル

 

図2: 鳥取砂丘での風紋形成の実地実験

 
 

図3: SG成果発表会の発表スライドより(知床での観測の様子(ドローンの飛行直前とタイムラプスの撮影中))

 

図4: 流氷の写真(左)とエッジ検知で抽出した流氷の形(右)


 

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活動報告

活動目的・内容

時間的、あるいは空間的に規則性な特徴が現れると、その理由を知りたくなります。その一方で、完全に周期的な運動や、静的で完全に対称的な空間パターンは理論的な理想化の産物で、それのみを道具としていては、実際の現象を十分に把握できないように思えます。このSG では、古典的な方法論をふまえつつその拡張をめざして、生物系や物理系の実現象に見られる秩序を扱います。特に、動的に発展する秩序について、いくつかの具体例をとって新しいアプローチを探ります。例えば、ドローンの空撮画像を用いて、植生の中間的な空間スケールの季節変動を追うといったテーマを考えています。

 

活動成果・自己評価

前期6月から8月にかけては、2週間に一度の定例会でD1およびM2のメンバーが研究紹介を行った。他分野の人にもわかるように問題意識を説明してもらうとともに、分野横断的な議論を行った。
後期は、本SGのテーマである「実現象にみられる秩序に対する新アプローチの模索」として2019年10月の下旬に鳥取砂丘の風紋観測を2日間にわたって行った。この目的はドローン2台をつかって上空から風紋パターンを撮影し、写真測量法を適用することで砂丘表面高さを定量的に測定することである。ドローンを主に測量モードで航行させて砂丘表面の多数の写真を撮影した。帰学後にこの写真を写真測量法のソフトウエアで解析した。この結果、我々は砂丘表面高さを空間2次元の座標の関数として構成できることができた (図1)。このデータはジオリファレンスされたもので地理座標(北緯、東経等)との対応もついている。今回の測定では、ドローンの飛行高度と長さの解像範囲を調べることも目的とした。信頼できるのは2桁程度であった(しかし、この点は改善の余地がありそうである)。ドローンでなければ得られない、この風紋の2次元パターンのデータに我々はフーリエ解析を適用した。この結果、特徴的なべき則が風紋の基本波長よりも大きいスケールにあることがわかった。また、鳥取砂丘で砂を一定量ずつ風にのせて風紋のミニチュアをつくる実験も現地で行い、風紋パターンの時間発展の様子がビデオに記録された(図2)。この解析は今後の課題である。11月から12月の定例会では風紋データの解析について議論、検討を行った。
また、次の実現象として我々はオホーツク海の流氷を選び、そのサイズ分布などの解析を目標とした。2020年2月中旬に2日間をかけて網走、知床の海岸でドローン2台をつかって砂丘の場合と同様の観測をおこなった(図3)。帰学後に、写真の画像解析からエッジ検出をおこなって各流氷の上空から見た面積や形状の特徴付けをおこなった(図4)。サイズ分布については、先行研究で調べられたやや大きいスケールでのべき分布と整合的な結果が得られている。サイズの解像範囲はこの場合は3桁を超える程度であった。また、今回も流氷を海岸からタイムラプス撮影し、時間発展の様子も記録した。この解析は形状の特徴付けとあわせて今後の課題となろう。
さらに2020年3月に浜松の中田島砂丘の風紋観測をおこなった。方法は鳥取砂丘の場合と同様である。測定精度の改良、および、先に得たべき則の普遍性をしらべることが目的である。結果は現在解析中である。
ドローンをつかった測量技術は、ドローンの飛行制御性能の発達、ドローンカメラの高性能化、コンピュータビジョンの発達、地理情報システムの整備等により現在急速に普及している。特に、本SGではドローン測量がいままで観察されていなかったスケールにおける新しい秩序を発見する手段として成熟しつつあることを各メンバーが身をもって体験することができた。また、得られたデータを複数のメンバーでにぎやか楽しんで解析することもできた。こうした点で本SGは大成功であった。

 

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
松本 剛(代表教員) 物理学・ 宇宙物理学専攻 助教
市川 正敏 物理学・ 宇宙物理学専攻 講師
小山 時隆 生物科学専攻 准教授
藤 定義 物理学・ 宇宙物理学専攻 准教授
宮崎 真一 地球惑星科学専攻 教員
松村 大毅 その他(理学研究科以外など) B2
篠 元輝 生物科学専攻 D1
渡邊 絵美理 生物科学専攻 M1
高野 友篤 生物科学専攻 M1
前田 玉青 生物科学専攻 M2
佐藤 慶暉 その他(理学研究科以外など) B2
山下 達也 物理学・宇宙物理学専攻 M1
原 誠人 数学・数理解析専攻 M1
吉永 彩夏 生物科学専攻 M1
磯田 珠奈子 生物科学専攻 D1
中澤 淳一郎 生物科学専攻 B3
幕田 将宏 物理学・宇宙物理学専攻 D4
須田 沙織 物理学・宇宙物理学専攻 D2
吉田 純生 生物科学専攻 M1
樋沢 規宏 物理学・宇宙物理学専攻 M1
上野 賢也 生物科学専攻 D2
竹中 亮太 物理学・宇宙物理学専攻 M2
糀谷 暁 化学専攻 M1
福島 理 物理学・宇宙物理学専攻 M1
田口 貴哉 物理学・宇宙物理学専攻 M1
 

[SG9]疾患における集団的細胞挙動の数理モデルの開拓

図1: 病理サンプル撮影の講習会

 

図2:  SG成果発表会の発表スライドより

 

 

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活動報告

活動目的・内容

非常にダイナミックな生命現象である「疾患」を数学・物理のテーマとして取り上げ、医学の研究グループと行っている共同研究に実際に参加することで、各自の専攻分野の知識を深めるだけでなく分野の枠を超えて研究の視野を広めることがこのSGの目的である。
病理診断の現場においては、固定した細胞組織の染色画像を観察し、細胞の形状や配列秩序から総合的に疾患の種類とその進行度を主に経験則に従って判断している。一般的に疾患時の組織は、健常時の組織構造に比べて個々の細胞の見かけや集団秩序が乱れていることが知られているが、組織のホメオスタシス(恒常性)の乱れを定量的に解析・評価することは未開拓の課題である。このSGでは、ヒト病理画像を用いて、個々の細胞やその集団秩序構造の乱れを物理学的に解析し、これを数理モデリングとリンクさせることで定量化し、読み解くことを目指しており、このような先行例のない研究テーマに意欲的に挑戦する参加者を募集する。 昨年度スタートした本SGは学部生から博士院生まで分野を超えた参加者が集っており、全体講義を通して知識を共有し、病理画像の解析にとりかかっている。今年度は、医学部・解剖センターに新たに導入された病理画像解析ソフトウェアなど新しい技術を積極的に活用し、昨年度培った経験をさらに大きく発展展開していくことを計画している。
参加者は数学・物理・医学の三つの研究グループを回って、このSGで用いる解析・モデル手法や理論について講義もしくは実際のデータを前にした実習を通じて習得する。例えば、さまざまな病理画像をどのように医師が見ているかについての講義(医学グループ)、これを解析する部分を実際に体験してもらう実習(物理グループ)、それらのモデル化を目指す界面ネットワークの数理に関する講義(数学グループ)などである。その中であがった成果や直面した疑問・問題点を全体のセミナーなどで発表・議論する。
 

活動成果・自己評価

本SGでは,病理組織の画像を解析して,健康な組織と区別するための物理的な指標を見つけ出す,という目標を掲げ,担当教員の指導の下で参加学生が自分の手で作業を行った.様々な組織の癌について,以下のように研究を進めた.
1. 病理画像診断に関する全体講義(鶴山)
2. 市販の病理サンプルの撮影による病理画像の作成
3. 病理画像を教材に核などの特徴を抽出する方法に関する講習(山本・鈴木)
4. 機械学習を利用した細胞核抽出の実習
5. データ解析の基本的な統計手法の勉強会とR実習(Svadlenka・複数回)
6. 画像解析の進捗を報告し担当教員から助言を受ける打ち合わせ(複数回)
7. 関連トピックに関する専門家の特別講義(ニューヨーク市立大学のC.Y.Shew教授,九州大学の河原吉伸教授)
自作の病理画像を用いて,上皮内癌の進行度の判定に使えそうな指標候補を見つけることができ,満足できる成果があがった.

 

 

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
Karel Svadlenka(代表教員) 数学・数理解析専攻 准教授
田中 求 高等研究院・ハイデルベルク大学 教授
鶴山 竜昭 医学研究科 教授
平塚 拓也 医学研究科 講師
山本 暁久 高等研究院 助教
鈴木 量 高等研究院 助教
村上 知暉 生物科学専攻 M1
高野 友篤 生物科学専攻 M1
大谷 暢宏 その他(理学研究科以外など) B2
川上 航 その他(理学研究科以外など) B2
浅倉 祥文 その他(理学研究科以外など) D2
幕田 将宏 物理学・宇宙物理学専攻 D4
吉田 純生 生物科学専攻 M1
上野 賢也 生物科学専攻 D2
松田 京子 生物科学専攻 B3
糀谷 暁 化学専攻 M1