名誉教授随想『想定外』

名誉教授随想『想定外』

元地球惑星科学専攻(地質学鉱物学教室)所属・名誉教授 平島 崇男

 
 

1年前の想定では、1955(昭和30)年度生まれの先生方と一緒に今年3月末で定年を迎え、4月以降は指導した学生さんたちが残した未公表データを論文化する予定であった。しかし、昨年夏に湊新総長から、想定外のご指名を受け、9月末で理学研究科教授を辞職、10月から教育・情報・図書館担当の理事として京都大学の執行部の一員となった。理事業務を引き受けるに際し、前任の理事の先生方や事務職の方々から事前説明を受けて業務を開始したが、半年たった今も日々新しい難題に直面し、右往左往する日々が続いている。

思い返せば、1974(昭和49)年に京大理学部に入学した後、いくつもの想定外に遭遇した。最初の想定外は、金沢大学の修士課程に進学し、就職する予定で気になる会社の入社案内まで取り寄せたが、師事した先生が京大に招聘されることになり、博士課程から京大に戻ったこと。

次は、金沢大学から移管した実験機器の使用手ほどきを受けた初日に、私の目の前で先生が倒れた。すぐに京大病院に連絡し緊急入院させていただき、成功率が50%と伺っていた難しい手術が成功したこと。この成功がなかったら、私の人生は全く別の物になっていたであろう。

D3の夏に、北極海に浮かぶスピッツベルゲン島に分布する高圧変成岩調査の話が舞い込んだ。これを受けると学位論文の提出が遅れるので少し悩んだが、またとないチャンスなので飛びついた。約1.5ケ月の現地調査を無事に終え、その帰路にカリフォルニア州で開催されたペンローズ会議に立ち寄り、先生や学兄達と合流した。この会議でC.Chopin博士による超高圧変成岩発見の歴史的講演に接した。1年遅れで学位論文を提出し、運よく、助手に採用され、その後、世界各地の超高圧変成岩を研究する機会を得た。

私生活でも大きな想定外を経験したが、周囲の人々の助言や協力で、これらを乗り越えることができた。ひたすら感謝である。