遺伝子スイッチ法を用いた難治性白血病の治療手法を考案

遺伝子スイッチ法を用いた難治性白血病の治療手法を考案

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2017/06/12更新

-複数の遺伝子を包括的に抑制することで抗腫瘍効果を確認-

上久保靖彦 医学研究科准教授、杉山弘 本研究科化学専攻教授、森田剣 医学研究科研究員、足立壮一 同教授らの研究グループは、造血に必須の多くの遺伝子を一括して制御する転写因子であるRunt-related transcription factor 1(以下、RUNX1)やRUNX2、RUNX3、補助因子のCBFβといったRUNXファミリーを包括的に抑制することで、RUNX1のみを抑制するよりも強い抗白血病効果を誘導することを発見しました。

 

本研究成果は、2017年5月23日午前5時に米国の科学誌「The Journal of Clinical Investigation」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

 今回の発見は、様々な癌腫でRUNXファミリーが腫瘍細胞増殖と維持に重要な働きを持つことを示唆しています。PI-ポリアミドによるRUNX遺伝子スイッチテクノロジーは、これら様々な癌をコントロールするのに有効な戦略となることが期待されます。

概要

白血病の中で最も多いCBF白血病でRUNX1は「がん抑制遺伝子」として認識されており、RUNX1が強く抑制されることが白血病の発症・増殖・維持に重要な要素だと考えられてきました。しかし、先行研究によりRUNX1は「がん促進因子」としても機能し、治療ターゲットとなることも示唆されてきました。実際に、RUNX1の抑制には抗白血病効果があるものの、完全に白血病を制御することはできませんでした。一方、骨発生に関する遺伝子を一括して制御する転写因子RUNX2は、白血病を含む様々な癌腫で「がん促進因子」として認識されてきました。また、RUNX3は肺癌や胃癌で「がん抑制遺伝子」と考えられてきました。RUNX1、RUNX2、RUNX3は同じ特定の塩基配列に結合しますが、癌における相互関係は不明でした。

 

そこで本研究グループは、RUNX1、RUNX2、RUNX3の相互メカニズムと、包括的な抑制による抗腫瘍メカニズムの解明を目的としました。杉山教授が開発したalkylating agent-conjugated pyrrole-imidazole (PI) polyamides(アルキル化剤修飾ピロール-イミダゾールポリアミド:PI-ポリアミド)の中でも、Chb-M’というPI-ポリアミドは、 RUNXファミリーが制御する遺伝子群を包括的に、人工的にスイッチオフすることが可能です。免疫不全マウスを用いたヒト癌細胞移植モデルで抗白血病効果を確かめたところ、FLT3-ITD変異を持つMLL白血病やチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)耐性PhALL白血病(フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病)、EGFR阻害剤耐性肺癌やHer2胃癌など、予後不良の腫瘍にも効果的であることが分かりました。

図:研究イメージ