本研究成果に係る論文は撤回されました。(2019年5月3日)

 

京都大学における公正な研究活動の推進等に関する規程第9条1項及び京都大学における研究活動上の不正行為に関する調査要項第3条に基づく調査委員会を設置し、調査を実施した結果、本研究成果にかかる論文に不正行為(改ざん・盗用)が認められました。(2019年3月26日)

 

研究活動上の不正行為に係る調査結果について(2019年3月26日)

http://www.kyoto-u.ac.jp/about/events_news/office/kenkyu-suishin/kenkyu-suishin/news/2018/190326_1.html

林愛明 本研究科地球惑星科学専攻教授らの研究グループは、2016年4月16日に発生した熊本地震の現地調査を行い、これまで知られていなかった活断層に沿って現れた全長40kmの地表地震断層(地震によって地表に現れた断層)を発見しました。また、断層の分布や地震のデータを解析した結果、阿蘇火山の地下約6kmにあるマグマだまりが地震断層破壊を妨げた可能性が高いことを明らかにしました。

 

本研究成果は2016年10月21日午前3時に米国の科学雑誌「Science」でオンライン公開されました。

研究者からのコメント

林教授

本研究成果により、いくつかの未知の活断層の存在が明らかになり、地震断層の破壊と火山マグマの存在との関連性が示唆されました。また、熊本地震により阿蘇火山の噴火の危険性が高く、この地震と連動して火山噴火のハザードを再評価することを言及した矢先、10月8日に阿蘇火山が噴火しました。今回の噴火が熊本地震と直接関連しているかどうか明らかではありませんが、本論文での提言はある程度妥当性のあるものだったと考えられます。本研究成果は、今後の地震・火山防災研究・ハザードマネジメントなどの基礎になると期待されます。

 

また、本研究において、阿蘇火山地域では複数の活断層が新たに確認されましたが、阿蘇カルデラ内の活断層の調査については不明な部分が多く、地下構造の調査・研究がさらに必要です。今後、阿蘇カルデラ内の活断層の詳細分布、古地震の再来周期、活断層と阿蘇火山の噴火との関係などを解明するため、トレンチ調査を含めて活断層の調査と地球物理学探査や地震活動性などの研究を行う予定です。

概要

日常生活を脅かす地震・火山噴火等をはじめとした地殻運動のほとんどは、プレート運動など地球内部の運動によって引き起こされています。また、大地震はしばしば火山噴火と連動していることが知られていますが、地質学的なデータが不十分なため、火山の存在が地震断層破壊にどのような影響を与えているのかという点は未だ明らかになっていません。

 

そこで本研究グループは、2016年4月16日に発生した熊本地震における地震断層の変形構造の特徴と活断層との関係および阿蘇カルデラ周辺域の地殻構造との関連性について調査するため、地震の翌日から半年間、震源域周辺において現地調査を行いました。

 

その結果、阿蘇カルデラを横切る全長約40kmの地表地震断層を発見しました。さらに、阿蘇カルデラ内の活断層と地表地震断層の分布特徴、および地震と地球物理学データの総合解析により、熊本地震断層の破壊は阿蘇火山のマグマだまりによって妨げられた可能性が高いことを明らかにしました。

図:阿蘇カルデラ内における地震断層と地殻構造の関係を表した概念図
布田川断層の北東延長部はマグマだまりの存在により妨げられているが、地表地震断層はカルデラの表層部に現れている。
 

詳細は、以下のページをご覧ください。