-超強力X線パルスによるプラズマ生成初期過程での体積収縮を発見-

永谷清信 本研究科物理学・宇宙物理学専攻助教、上田潔 東北大学多元物質科学研究所教授、福澤宏宣 同助教のグループ、クリストフ ボステト 米国SLAC国立加速器研究所研究員のグループ等による国際共同研究チームは、米国のX線自由電子レーザー(XFEL)施設LCLSから供給される非常に強力なX線をキセノン原子が集まってできた微小な粒子に照射すると、極めて短い時間では体積が収縮することを発見しました。従来、XFELに照射された微粒子は、大量の電子を放出してプラズマ化し即座に爆発すると考えられていたため、今回の発見はこれまでの常識を覆すものでした。この体積収縮は、プラズマ化の初期過程で、キセノン原子に局在化していた電子が粒子全体に広がることに起因します。

 

本研究の成果は、米国の科学雑誌「SCIENCE ADVANCES」で、平成28年1月29日にオンライン出版されました。

研究者からのコメント

X線自由電子レーザー(XFEL)の高強度短パルスを用いた実験では、しばしば予想もしなかった現象が引き起こされ、我々を驚かせてくれます。今回の研究では、フェムト秒という短い時間は、従来膨らむと思っていた物が逆に縮む事が見出されました。これは単に現象として面白いということを超えて、XFELにより引き起こされる現象の基礎的な部分にすら我々の理解が十分に及んでいないことを示しています。今後も、新しい光源であるXFELを十分に使いこなすための、基礎的な知見を積み重ねるとともに、XFELで初めて現れる新しい反応や状態の観測を通して科学の発展などに寄与できればと思います。

概要

米国のLCLSや日本SACLAのようなX線自由電子レーザー(XFEL)実験施設では、非常に強力な、照射時間の極めて短いX線パルスが生成されます。XFELの非常に強力な極短X線パルスを用いると、微結晶や結晶化していない試料からでも1発のX線パルスでX線散乱を計測できるため、これまで構造が決定できなかったさまざまな物質や、極めて短時間しか存在できない物質の構造が決定できると期待されています。しかし、強力X線パルスが試料物質と相互作用すると、多くの電子が放出され、試料はプラズマ化してバラバラに飛び散ります。従って、試料が壊れる前にX線散乱を計測して構造を決めなければなりません。そのため、X線パルスが物質と相互作用して引きおこす超高速反応を理解して制御することが、XFELを用いた新規物質構造の決定の重要な課題となっています。

 

本研究では、キセノン原子が集まった微粒子を対象として、プラズマ化の初期過程における超高速構造変化を明らかにすることに成功しました。

1番目のパルスにより起こる微粒子の体積収縮を、2番目のXFELパルスによるX線回折で観測
 

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