Photograph 51

Photograph 51

スレヴィン大浜華

 

 DNAは、親から子へと受け継がれる遺伝情報を担う分子です。この分子が複雑な遺伝情報をどのように保持しているのかという謎は、これまでたくさんの研究者を魅了し悩ませてきました。

 

 この謎の解明に重要な手がかりを与えたのが、DNAの複製の仕組みを連想させるようなDNAの構造でした。この構造は、ある1枚の写真を目にした科学者らによって明らかにされました。その3人の科学者、ワトソン、クリックとウィルキンソンは1962年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

 

 「Photograph 51」という名で知られるその写真を撮影したのは、ウィルキソンの部下であった研究者、ロザリンド・フランクリンでした。彼女がDNAの研究に用いたのは、X線を用いて物質の立体構造を調べるX線結晶構造解析という手法です。分子を規則正しく並べた結晶にごく短い波長をもつX線をあてると、X線が結晶中の原子にぶつかり散乱されます。X線結晶構造解析では、この散乱光を写真フィルムで捉え、そこに描かれた複雑な模様を解析することで、結晶の構造を明らかにします。フランクリンが撮影に成功した×印のような形の像は、2本の細長いDNA分子が互いに巻き付いてできるDNAの二重らせん構造を示すものでした。

 

 DNA分子の結晶化は特に難しく、できたDNA分子の結晶はもろく壊れやすい上に、写真の解析は当時すべて手作業で行われていました。それらの困難を克服したフランクリンの研究が、20世紀におけるDNA二重らせん構造の発見を可能にしたのです。