新たな物質で初めて超伝導性の発見 ―未開拓物質群のこれからの研究発展に期待―

新たな物質で初めて超伝導性の発見 ―未開拓物質群のこれからの研究発展に期待―

瀧口 あさひ

 

京都大学大学院理学研究科 前野悦照教授らのグループは、マイナスの金属イオンという非常に珍しい物質を含む酸化物で超伝導を発見した。英国Nature Communications誌に2016年12月12日にオンライン掲載された。

 

地球で最も豊富な鉱物は、ペロブスカイトという構造をしている。特に、地球内部のマントルは、マグネシウム・ケイ素・酸素によるペロブスカイト構造の酸化物が、体積で90 %を占めるとも言われている。このようにペロブスカイト酸化物は地球でありふれた存在だが、酸化物の中で初めて超伝導を示したり、セラミックコンデンサや太陽電池に利用されるなど、多様な性質を持っており、現在も基礎から応用まで盛んに研究されている。

 

さて、この「ペロブスカイト構造」とはプラスの金属イオンとマイナスの酸化物イオンが秩序正しく積み重なったものだ。金属は通常、プラスの帯電したイオンが安定で、自然界にもこの状態で存在している。しかし、今回の研究対象の「逆ペロブスカイト構造」では、ペロブスカイト構造とは反対の「鏡写し」の関係にあり、金属イオンがマイナスに帯電している異常な状態である。そのため、逆ペロブスカイト酸化物は不安定で、空気に触れると分解されてしまう。実験は真空中で行うなど細心の注意を払いながら行われた。今回の研究で前田教授らは世界で初めて、逆ペロブスカイト構造の酸化物が超伝導を示すことを発見した。

 

逆ペロブスカイト酸化物についての研究は始まったばかりだ。かつてペロブスカイト酸化物で発見された超伝導は、その後の高温超伝導の発見や、リニアモーターカーの実現へとつながっていった。今回の逆ペロブスカイト酸化物での超伝導の発見から、他にも超伝導体はあるのか、他の一般的な鉱物の「鏡写し」の物性はどうなっているのか等、研究発展の口火を切ることが期待される、と前田教授らはコメントしている。今後も「鏡写し」の物質からどのような世界が広がるか、目が離せない。