チタン層状化合物が元素回収や固体燃料電池の新たな世界を開く

チタン層状化合物が元素回収や固体燃料電池の新たな世界を開く

草場 哲

 

チタンの層状化合物が低温でカドミウム等の特定の重金属のみを吸収することを、京都大学影山洋教授(専門:固体化学)らの研究チームが発見した。研究成果は12月14日午後7時、英国科学誌Nature Communicationsに掲載された。溶液を利用しない新たな金属元素の回収方法などへの応用が期待される。

 

粘土や鉛筆に含まれるグラファイトなどの層状化合物は、薄い層の結晶が積み重なった構造をしている。これらの層状化合物では、層と層の間に金属元素が入り込む「インターカーレーション反応」が起こることがこれまで知られているが、これまで特定の元素のみを吸収することはできなかったという。

 

研究チームはTi2PTe2(Ti:チタン、P:リン、Te:テルル)という物質に着目。当初は電気を損失なく流すことができる超伝導と呼ばれる現象を目指して、周期表の片っ端から様々な金属元素を入り込ませる実験を行っていた。そこで、この物質がカドミウム、銅、亜鉛の3種類の元素のみを吸収することに気が付いた。さらに、通常の固体の反応は1000℃程度に加熱しなければならないところ、Ti2PTe2ではカドミウムは80℃、亜鉛は100℃程度と低い温度で反応が進むことも明らかになった。最初の超伝導の目論見は失敗したが、思わぬ発見へとつながった。

 

新発見したこの特性の応用として、元素回収が挙げられる。身の回りの電子機器等には様々な希少金属元素(レアメタル)が用いられている。近年こうした元素資源の枯渇が指摘されており、廃棄物品(都市鉱山)からの元素の回収が注目されている。これまでの回収方法は液体中の化学反応が主だが、今回の発見で廃液を出さない固体物質を用いる可能性が開ける。影山教授によるとTi2PTe2に一度吸着した元素を再び取り出すことは容易だという。またこの他にも、次世代の電池として期待される、電池内に液体を用いない固体燃料電池の開発において重要な、固体中での金属元素の拡散現象の理解促進につながる。 影山教授は「特定の元素が、しかも低温で入りこむ層状物質はこれまで知られていなかった。今回の発見は固体の金属吸収について新たな可能性を示したという点で重要。」と語る。