浜 直史

 

今年度のノーベル物理学賞は、日本のスーパーカミオカンデの研究を率いた東京大学宇宙線研究所所長のT.Kajita と、カナダはSNO という実験施設の所長として実験を率いたA.McDonald に贈られることとなりました。2 人の受賞理由は、ニュートリノという素粒子がとても小さいながらも0 ではない質量を持つと示したことです。標準理論という現在の理論はニュートリノの質量を0としているので、これを修正しなくてはいけません。では、ニュートリノが質量を持つと、標準理論はどう修正されるのでしょうか。この部分に焦点を当てると、現在、主に2種類の修正の方法が考えられています。

 

第1 の修正方法は、電子など他の粒子と同じ仕組みで質量を持っていると考えることです。これは第一感では自然な発想ですが、ニュートリノの質量がなぜこんなに小さいのかという謎が残ります。

 

そこで、ニュートリノの質量がとても小さい理由も計算で導けるような修正方法も考えられています。こちらでは、他の粒子とは違う、ニュートリノだけに許される新たな構造での質量も持っているとするのです。ニュートリノは電磁気力などの多くの力に反応しない性質があるために発見が難しく、実験の制御も難しかったのですが、この質量の仕組みはその、ニュートリノが他の粒子と違い電磁気力に反応しないという性質を使っています。

 

現在、後者の修正方法が正しかった場合に特有の現象が実際に起きているか、実験で探されています。