竹村 毬乃

 

今年のノーベル物理学賞が梶田隆章教授に授与されることに決まった。功績は「ニュートリノが質量を持つことを示す、ニュートリノ振動の発見」。

 

ニュートリノは宇宙を構成する素粒子の一部である。様々な研究により、ニュートリノは光速で動き、質量はゼロであるという前提で物理学の理論体系が出来上がりつつあった。

 

そんな中、世界最大のニュートリノ観測装置・スーパーカミオカンデが完成し、梶田教授らは驚くべき発見をすることになる。地球の裏側の大気圏で生成されたニュートリノは、地球を通り抜けてくる間に種類が変化していることが分かったのだ。この変化がニュートリノ振動である。

 

相対性理論によれば、ある物質が速く動くようになると、相対的に周りの物質は遅く動くように見える。やがてある物質の速度が光速に達すると、周りのものは動かなくなり、時間が止まっているようにみえる。このとき物質は何か他のものへ変化することができない。変化には必ず時間が必要だからだ。

 

ニュートリノが変化しているということは、光速よりは遅い速度で動いていることを示している。そして質量を持たないものは光速で動き、質量を持つものは光速に到達できないことが分かっているので、ニュートリノは質量を持つと考えられるのである。だからニュートリノ振動が質量の証拠となったのだ。

 

広く受け入れられていた物理学の根底を覆し、宇宙の見方を見直す発見だった。今後の研究にも注目が集まるだろう。