ノーベル賞

ノーベル賞

天野 彩

 

「ノーベル賞の半分は微生物にあげたい。」

 

今年のノーベル生理学賞受賞者の大村智氏のこの言葉には、人間の役に立つ化合物を作ってくれる微生物への感謝の気持ちが表れています。大村氏だけでなく、世界の製薬研究は微生物がつくる化合物に大きな恩恵を受けてきました。

 

大村氏は40 年ほど前、後に熱帯地方の河川盲症(オンコセルカ症)の特効薬となる抗生物質を国内の土壌中の放線菌から見つけ、10 億人もの命を救ったと言われています。日本は湿潤・温暖な気候のおかげで肥沃な土壌をもち、欧米に比べて微生物資源が豊富であるため、微生物の探索とその利用技術の開発の分野では世界をリードしてきました。結核治療に用いられた「カナマイシン」、ガン治療に有効な「マイトマイシン」など多くの日本発の抗生物質が開発され、人類の健康・医療に大きな貢献をしています。

 

しかし、自然界から欲しい化合物を見つけるには労力を必要とします。近年の製薬研究はコストパフォーマンスを重視し、これまで収集・蓄積された微生物や遺伝子に関するデータを利用してデータベース上で目的化合物を探すか、既にある化合物を改変して新しい薬を作っています。多くの製薬会社の微生物探索部門が消えてしまいました。

 

ところが、人間には想像もつかないような未知の力を持つ微生物は世界中にたくさんいます。データベース上の情報は既知の化合物と類似のものしか生み出しません。これまでと一線を画すような劇的な効果をもつ化合物を見つけるには、自然界からの探索を続けていくことが必要です。