浜 直史

 

広い宇宙にブラックホールというものがある。いったん中に入ると光ですら出てこられないものだ。巨大なものでは太陽の重さの数百万倍や数百億倍あると言われている。中に入ったら出てこられないのだから、なかなか調べることができない。そこで、特に重要な性質、ブラックホールが将来どうなるのかを解き明かすのに使われたのが、世界で最も小さいものを研究する、素粒子論という分野の考え方だ。それによるとブラックホールは、周りのものを取り込みながら永遠に存在するのではなく、寿命があり、最後には消えてなくなるだろうと考えられている。

 

水素原子の更に100 分の1 くらいの大きさで、原子などを作る部品が素粒子だ。このくらい小さなものには、日常の感覚では理解できない不思議な性質が多い。例えば、観測できないくらい一瞬だけペアで現れては、くっついて消えてを繰り返す素粒子などがいる。これらは決して観測できない。だけれど、あると考えないと説明がつかないことが多くあるのだ。

 

そして、これらがブラックホールの中に入るかどうかの境界上で現れる場合を考える。境界上で現れたペアでは、現れた一瞬の間にペアの片方だけがブラックホールに入ってしまい、くっついて消えることができないままになることがある。そんな素粒子のペアの一方のみをたくさん取り込む様子は、見方を変えるとブラックホールがペアのもう片方の粒子を吐き出しているとも言える。これによって、近くに取り込める物質がなくなったブラックホールは、逆に物質をゆっくりと吐き出していって、遂には長い時間をかけて消えてしまうだろうということが分かったのだ。