GFP の発見と意外で偉大な応用

GFP の発見と意外で偉大な応用

西村 理沙

 

2008年、緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見でノーベル化学賞を受賞した下村脩教授(1928年生まれ)の研究を紹介します。

 

下村教授はオワンクラゲという発光生物からGFP を発見し、その単離に成功しました。GFP は名前からもわかるように緑色に光るタンパク質です。光る部分を筒状のタンパク質で覆う、灯籠のような構造をしています。下村教授の研究の目的は、オワンクラゲがなぜ緑色に光るのか、を解明することでした。1961年、下村教授はオワンクラゲの発光物質を二種類発見しました。後に発光の仕組みは、海水に反応して青く光る物質と、その青色光が当たると緑色に光る物質からなる、ということを明らかにしました。後者の物質がGFP です。

 

現在、GFP は生物学の幅広い分野で研究の道具として用いられています。細胞はDNA にさまざまなタンパク質の設計図を記しています。DNA を組み込む技術によって、観察したいタンパク質の設計図にGFP の設計図をくっつけると、細胞はGFP 付きのタンパク質を勝手に合成してくれます。細胞に青色光を当てるとGFP だけが緑色に光り、光の動きや場所を観ることで生体の機能を損なうことなくその分子のふるまいを観察できます。その間、細胞も生物も生きたままです。GFP の最大の長所は生体に無害であるという点です。

 

下村教授の研究は単純な生命現象の不思議を解明したまでです。しかしこれが生体分子機構の解明を急速に進めました。GFP の発見は、役に立たないと思われがちな基礎研究の大切さを改めて科学の世界に示した偉大な研究だといえます。