理学研究科生物化学研究室の紹介

理学研究科生物化学研究室の紹介

橋谷 文貴

 

私たちの体は細胞と呼ばれる小さな袋状構造の集合体です。皮膚は皮膚細胞が、神経は神経細胞が集まってできています。様々な種類の細胞によって私たちの体はできているのですが、興味深いことに全ての細胞は全く同じ内容の設計図、DNA を持っています。ではなぜ同じ内容のDNA から多様な種類の細胞が作られるのでしょうか?それは個々の細胞がDNA の大半の部分に封をして、一部のみを使っているからです。つまり皮膚細胞はDNA のうち皮膚になるのに必要な部分のみを、神経細胞は神経になるのに必要な部分のみを使い、他の部分を封じ込めることでそれぞれ特定の細胞になるのです。逆に言えばこの封を人為的に取り払うことで皮膚細胞を神経細胞に変身させることも可能で、豊富にある皮膚細胞を変身させ、失った組織の細胞を補填するのが再生医療です。

 

多くの研究者がDNA に施された封を除去する手法や化学物質を開発しています。しかし無差別に除去すればいいわけではなく、望んだ細胞へと変身させるためには特定の領域の封のみを取り払うという繊細な操作が必要になります。私達が研究しているピロールイミダゾールポリアミド(PIP)という化学物質は特定のDNA の配列に結合する化合物で、標的となる配列を自由に設定することができます。このPIP と封を除去する化学物質を結合することで狙ったDNA領域の封のみを取り払えるようになります。再生医療は今、最も注目を集めている研究領域であり、私の研究室はそこに化学の分野から切り込みを入れている研究室のひとつです。