進化ゲーム理論と動物行動への応用

日時

2019年1月30日(水)15:00〜17:00

 

場所

京都大学理学部3号館数学教室108号室
アクセス 建物配置図(北部構内)【5】の建物

 

講師

大槻 久(総合研究大学院大学 先導科学研究科)

 

要旨

進化ゲーム理論は個体間の利害の対立がもたらす帰結を分析するツールとして進化生物学で幅広く用いられてきた。この講演では前半に進化ゲーム理論の概説を行いつつ、集団に空間構造がある場合の進化ゲームダイナミクスに関する理論研究を紹介する。後半では動物行動への応用を取り上げ、特に順位制の成立機構に関して話題を提供する。


開催報告

総合研究大学院大学の大槻久さんに「進化ゲーム理論と動物行動への応用」というタイトルで、大きく分けて前半と後半の二つの話題についてお話しいただきました。

 

前半は、プレーヤー位置間に距離構造が入った進化ゲーム理論について、Wright's island model、Kimura-Weiss's stepping stone modelからより一般のグラフ上の進化ゲーム理論まで、ファージや緑膿菌集団、またそれらが位置する空間構造の調整を寒天で行うという実例を通して、紹介いただきました。また、全プレーヤーのペア間でゲームが行われる場合を記述する各戦略頻度の時間発展方程式を構成する利得行列の補正として、空間構造の特徴量が現れるというご自身の研究結果についても紹介いただきました。

 

後半は, マイコドリ(鳥類)とシクリッド(魚類)の社会集団で見られる順位制についての直感的な理解がしづらい観測事実と、それらをどのようにゲーム理論的なアプローチで理解できるかというご自身の未発表研究についての話題を提供していただきました。観測事実とゲーム理論的アプローチによる結果の間にあるギャップに関して、参加者の様々な質問に答えながら議論を進めていただくことによって、予備知識があまりなかった参加者の理解も深めることができた大変貴重な機会となりました。(文責 太田洋輝)