セミナー等

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第1回 MACSコロキウム「大質量星爆発の数理」(2017年10月6日)

 

第1回MACSコロキウムでは、理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)副プログラムディレクターである長瀧重博さんに「大質量星爆発の数理」というタイトルで講演をしていただきました。大質量星が超新星爆発を経て、ブラックホールや中性子星になる過程を、身近な物を使った比喩とコンピュータを使った数値計算を交えながら平易に解説していただきました。

 

また今年のノーベル物理学賞の受賞理由となった、ブラックホール合体による重力波の観測、そしてまだ観測されていない**中性子星合体の可能性についても触れていただきました。このような現象は、私たちとあまり関わらない遥か遠い場所の出来事に聞こえるかもしれませんが、最近の研究ではアクセサリーなど身の回りにある鉄より重い元素は、中性子星合体によって作られたということが有力な説となっているそうです。理学5専攻から幅広く聴衆が集まり、講演中から様々な視点から質疑応答が行われ、とても有意義なコロキウムとなりました。

 

**:コロキウム開催日の2017年10月6日時点では、中性子星合体による重力波観測の公式発表はありませんでしたが、2017年10月16日に実際に観測されたという公式発表がありました。

   
  

[SG2]外部講師セミナー「情報幾何学入門-幾何学者から見た情報幾何学」(2017年9月28日・29日)

スタディーグループ2「イメージングと数理の融合:動きや形の定量とモデリング」では、名古屋工業大学の松添博教授をお招きし、情報幾何学のセミナーを2日間にわたって行いました。なお、セミナー内容の詳細は、下記リンクから講義スライドのファイルをご覧ください。

 

初日のセミナーでは、1.多様体の速習、2.統計モデルの幾何学、3.双対接続と双対平坦空間、4.最尤推定量の幾何学について3時間程度の説明がなされたのち(参照:170928kyoto-handout.pdf)、擬似スコア関数とプレ・コントラストについてお話がありました(参照:170928quasi-score.pdf)。途中、選挙の投票遷移確率の推定など時事ネタを踏まえたお話しがあり、情報幾何学が扱う問題の具体的な説明がなされました。2日目のセミナーでは、統計多様体の幾何学と異常統計についてお話がありました(参照:170928anomalous-handout.pdf)。べき型統計分布に対してq-正規分布を用いる話や、実例として医用画像処理の研究について紹介していただき、情報幾何学について実感の湧くセミナーとなりました。

 

セミナーへの参加者は22名で、理学研究科以外にも工学研究科やウイルス・再生医科学研究所、医学研究科などから参加者が集まりました。情報幾何学への関心の高さが表れたセミナーとなりました。

 

[SG9] ニワトリ胚の羽芽(feather bud)発生観察 (2017年8月4日)

スタディグループ9「本物を見て考えよう!:脊椎動物の胚観察から数理の可能性を探る」では、本グループの教材論文における研究対象であったニワトリ胚の羽芽(feather bud)の発生を実際に観察しました。

 

参加学生たち(主に学部3回生)は、自分達の手で孵卵6〜16日目の本物のニワトリ胚を解剖し、背中や太もも部分の表皮における羽芽の発生過程を自分たちの手と眼で観察しました。加えて、後期に行う実験に向けた、トリ胚表皮の培養にも挑戦するなど、各々が有意義な時間を過ごしました。

 

 

 

 


[SG3] バーチャルリアリティ体験・ガイダンス(2017年8月1日)

スタディーグループ3「VRで見る・3Dで触る先端科学」では、ガイダンスを行い、実際にVR機器を体験してもらい、それらを利用して様々な対象を可視化する為の基礎について解説しました。

 

まず、現在のバーチャルリアリティ (VR) の主流である、ヘッドマウントディスプレイ (HMD) 型のVR機器を実際に装着してもらい、VRの世界を体験してもらいました。HMD自身に搭載されたジャイロスコープや加速度計だけでなく、外部に設置したセンサーやベースステーションを用いて赤外線でHMDやコントローラの位置や向きを測定するので、実際にVRの世界に没入して見回したり、動きまわったり、ものを掴んで動かしたりすることなどができます。当日はHMD標準のチュートリアルなどで基本的な操作方法を学び、SG3の代表教員・稲生啓行講師が作成した4次元のフラクタル集合 (複素2次元の力学系のジュリア集合) を観察するソフトや他のアプリなども使って、実際にバーチャルの世界に入るとはどのような感じで、その中でどのように動いたりコントローラで操作したりできるのかを実際に体験してもらいました。空中に絵を描いたり、世界中を飛び回ったりと色々なものを試してみることで、これから自分で何か作る上でのヒントが得られたのではないかと思います。

 

ひと通り参加者に体験してもらったあとで、講義形式でガイダンスを行いました。9月の最終週にまた集まって実際に色々作成してもらう予定になっているので、その準備として、以下について解説し、一部については実際に各自のPCでもやってもらいました。

 
  • よく使われている簡単な3Dモデルのファイル形式 (STLファイル、OBJファイルなど) の概説。
    • VRで観察したい対象をこのような形式のデータとして出力することで、色々なソフトウェアで扱うことができます。
  • 数式処理ソフトや3D分子シミュレーションソフトなどを用いて、簡単な3Dモデルの作成。
    • 2変数関数のグラフや球面のような式で書けるものや、蛋白質構造データバンクなどで公開されている分子構造のデータなどは簡単に3Dモデルにすることができます。
  • Unity を用いて、これらのVR機器を利用したソフトを作る為の基礎。
    • Unity は様々なVR機器に対応した、統合開発環境を内蔵したゲームエンジンです。これを使うことで簡単にVR機器に対応したソフトウェア (もちろんゲームに限りません) を作ることができます。各VR機器を使う為の最初の設定や、Asset Storeから必要なライブラリをインポートして利用することで様々な機能を実装する方法などを学びました。
 

参加者の皆さんには、今回の体験や知識を踏まえた上で何をどのようにVR機器で可視化するか、この夏休みの間に考えてもらうことになっています。色々な3Dモデルを作ることはもちろん、それをアニメーションさせたり、コントローラを用いて自由に操作したり、他にもたくさんの可能性があると思っています。どのようなアイディアが出てくるか、とても楽しみです。

 

[SG2]外部講師セミナー「器官発生過程の定量と数理」(2017年7月28日)

スタディーグループ2「イメージングと数理の融合:動きや形の定量とモデリング」では、理化学研究所生命システム研究センターの森下喜弘氏を招き、セミナーを行いました。

 

本セミナーでは、生体器官の形態形成過程における細胞・組織レベルの動態解析(計測・データ解析・数理モデリング)について、ニワトリ神経管の実験データを具体的に示しながら、実験と理論の融合研究のお話しをしていただきました。主に3つのトピックから成り立っており、生体組織の1.変形、2.力学、3.情報をキーワードとし、どの話題においても多様体を基礎とする理論について触れられました。また、どのような理論構築が可能か、どのように実験データを利用し理論研究と結びつけるのかといったテーマについてもお話しいただきました。

 

1つ目のトピックは生体組織内に埋め込んだランドマークの情報から変形写像を推定するデータ解析に関するお話しで、最新の研究成果を基にお話しいただきました(2017, Morishita, et al., Nat Comm.)。2つ目のトピックでは、神経管の形態変化を超弾性体でモデル化し、成長を含む力学シミュレーションで形態形成を再現する最新の試みについてお話しいただきました。3つ目のトピックでは、細胞に位置情報を与える情報源の最適な配置に関する問題に対して、情報論的視点から研究に取り組まれている様子をお話しいただきました。

 

突然のスコールにもかかわらず30名近くの参加者が集まり、研究のモチベーションや理論構築の前提に関する活発な質疑がなされました。多様な背景を持つ参加者(生命科学系:非生命科学系=3:2)の活発な議論が続き、予定の時間を越すほどの盛況となりました。

 

MACS連続講演「Neurotopology - The topology of neural systems」(2017年7月18日・19日)

MACS連続講演ではアバディーン大学のRan Levi氏を招き、「Neurotopology – The topology of neural systems」と題してふたつの講義からなる講演会を行いました。

 

代数トポロジーとはホモトピーと呼ばれる変形で不変な空間の性質を代数的に抽出することで研究する数学分野であり、空間のおおまかな形を数値化するための道具を提供します。近年、代数トポロジーはネットワーク理論、データ解析、ロボット工学など様々な分野へと応用され、「応用トポロジー」という言葉が一般的になりつつある。本講演会ではLevi氏がスイスのBlue Brain Projectと共同で研究している代数トポロジーの神経科学への応用に関する解説を2回に分けて行いました。

 

第1回講義は代数トポロジーの入門コースでした。講義の目的は代数トポロジーの道具を学ぶことではなく、アイデアを理解することでした。単体複体という「レゴブロック」のように単純な基本ブロックを積み上げることで得られる基礎的な空間と関連する旗複体を導入し、それを解析するための代数的な道具であるホモロジーについて解説しました。また、有向旗複体という新しい空間も導入し、神経科学をモデル化するために必要なセッティングを整えました。

 

第2回講義は、第1回講義のアイデアを用いて行なっているLevi氏とBlue Brain Projectと行なっている共同研究について、主に代数トポロジーがどのように応用されるかについての解説をしました。Blue Brain再構成と呼ばれる神経科学におけるデータ解析の方法と代数トポロジーを用いたデータ解析を比較することで、代数トポロジーの応用が神経科学において有効であることを示し、その後、いくつか具体的なモデルに対して代数トポロジーを用いたデータ解析を行いました。最後に、Levi氏とBlue Brain Projectの共同研究の現状と将来の展望をお話いただき、講義は終了しました。

 

講義には30名近くの出席者が集まり、講義は盛況でした。参加者は多様な背景(数学だけではなく、物理、生物、神経科学など)をもっていましたが、Levi氏が丁寧に講義なさったため、多くの熱心な質疑がなされ、講義終了後の議論も非常に活発で、予定時間を超過するほどでした。

 

*当日の講義スライドおよび配布資料はこちらのページからダウンロードできます。