セミナー等

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[SG7]外部講師セミナー「実験データに基づく遺伝子制御構造・動態の解析」(2017年2月22日)

スタディーグループ7「自然科学における統計サンプリング」では、広島大学理学研究科の粟津暁紀氏を招き、セミナーを行いました。

 

生体内の階層をまたがるシグナル伝達の最も小さいスケールを、DNA塩基配列とヒストンからなるヌクレオソームを舞台としたmRNA転写機構におく視点を導入することから始まりました。その後、大きく分けて3つの、実際の細胞のデータに基づく研究を紹介していただきました。具体的には、一般のDNA配列とヌクレオソーム形成位置の相関について線形モデルを使った特徴配列抽出による解析、引き続いて、DNA配列の繰り返し構造とヌクレオソーム形成位置の相関についてクラスタリングを用いた解析を説明していただきました。最後には、シロイヌナズナのmRNA発現量データの注意深い統計解析を通して得られた、発現量に関する負の二項分布やベキ分布について、実験の専門家を始めとする様々な背景を持つ参加者を交えて活発な議論が続きました。

 

[SG5] マガン観察合宿(2017年2月10−12日)

早川 美徳氏(東北大学教育情報基盤センター)
 
菅原 研氏(東北学院大学教養学部)
 
マガンの群れ
   

スタディグループ5「生命現象に潜む階層を横断する数理的原理の探求」では、宮城県でマガンの集団運動を観察し、“群れ”というものについて理解を深める合宿を行いました。群れは階層的な生物集団現象の代表例であり、特にマガンは数十固体でV字型編隊飛行という特徴的な群れ形態を取ることが知られています。このマガンの群れの諸相を実地観察し、そのうちの特徴的な振舞いの定量化とそのモデル化方法を学ぶために本合宿を行いました。初日は東北大学にて、東北大学教育情報基盤センターの早川美徳氏および東北学院大学教養学部の菅原研氏のセミナーを拝聴しました。早川氏のセミナーでは、マガンのねぐら入り時の集団運動について、個々のはばたきの協調性から群れの大きさの調節まで、様々なスケールでの動態計測およびモデル化の話をして頂きました。続いて、菅原氏のセミナーでは、「犠牲」に注目したロボットの群れの相互作用から、目的の機能を作り出す話をして頂きました。扱う題材は異なっていましたが、お二人のセミナーを通じて、集団運動研究の第一線に触れることができました。

2日目・3日目は宮城県大崎市にある蕪栗沼で「蕪栗沼エコガイドツアー」に参加し、マガンの群れのねぐら入り(夕方)と飛び立ち(早朝)を観察しました。2日目昼過ぎ、ガイドさんからマガンや蕪栗沼の説明をして頂いたのちに蕪栗沼へ行きました。日没近くになると、近くの水田などで餌を食べていたマガンの群れが蕪栗沼へ戻ってきます(ねぐら入り)。前日に早川氏のセミナーで聴いたように、マガンの群れが横一列になって沼へ戻って来る様子には、参加者一同驚いていました。マガンの群れは蕪栗沼で夜を過ごし、早朝、餌を探すために再び近くの水田などへ飛び立ちます(飛び立ち)。こちらは、騒々しい鳴き声と共に大量のマガンが飛び立つ様子に皆心を奪われました。飛び立ち後しばらくすると複数の群れが明確になる様子も観察することができました。


[SG7]外部講師セミナー「詳細つりあい条件を破るモンテカルロ・サンプリングの現状」(2017年1月25日)

スタディーグループ7「自然科学における統計サンプリング」では、東京大学総合文化研究科の福島孝治氏を招き、セミナーを行いました。

 

自然科学の幅広い文脈で、それぞれの状態分布は陽には与えられていないが、各状態分布間の比率は既知である場合があります。そのような問題設定において、実際に知りたい状態分布を計算する方法としてのサンプリング、その一つの例としてMarkov chain Monte Carlo(MCMC)の導入から始まりました。”よい”サンプリングとは何かという視点から、詳細釣り合い、一般のMarkov chainの遷移行列に関して成り立つCheegerの不等式そしてPeskunの定理を説明していただきました。その後、詳細釣り合いを破った遷移行列を使ったランダムウォークや剛体運動を例に、MCMCにおけるサンプリング手法開発の最前線について詳しく紹介していただきました。

 

第2回MACS懇談会(2016年12月19日)

石塚 裕大 助教
 
太田 洋輝 助教
 
高瀬 悠太 助教

第2回MACS懇談会では、2016年夏季に着任した3人のMACS特定助教が、自身の研究を紹介しました。その後の懇親会では、様々な分野の学部生、院生、教員を交えて、専攻の枠を超えた活発な意見交換が行われました。

 

「数論的不変式論のはなし」

石塚 裕大(理学研究科 数学・数理解析専攻)

 

 整数論には「重要だが、理論的にも計算するにも難しい対象」が多く現れます。表題の数論的不変式論Arithmetic Invariant Theoryは、それらの研究対象を線形代数の言葉で解釈し直し、その解釈を用いて元の研究対象を調べるという理論です。この講演では4次方程式(4次体)の例などを通じて、それらがどのように結びつくかの説明を試みました。また応用として、「5次方程式の解は、一般には代数的に(係数のベキ根と四則演算を有限回用いたものとして)表すことができない」というルフィニやアーベルの結果を、「ではどれくらいの5次方程式が代数的に解けないのか?(どれくらいの5次体がベキ根拡大ではないのか?)」という定量的な問題にした結果を紹介しました。

 講演後、「なぜ5次方程式を解くのか」という趣旨の質問をいただき、回答に詰まりました。うろ覚えですが、「解きたくなったから」という趣旨の回答をした気がします。実際、歴史的にも、2次方程式から4次方程式にはベキ根を用いた解の公式が発見されていましたから、「なら5次方程式はどうか」と考えていたのではないかと思います。また懇親会では「どこまでも厳密な解の性質を調べるんですね」という感想をいただき、お互いの体験を交えて問題意識の違いについて意見を交換しました。こうした問題意識の違いや根本的な動機について、実際的な体験に基づいた交流や議論を行うのは非常にいい刺激になりました。「刺激を受けて5次方程式について勉強した」という声もいただいたので、今度もお互いに刺激を受けるような試みを続けていきたいと考えています。

 

「多要素システムのミクロとマクロを繋ぐ」

太田 洋輝(理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻)

 

 感染ネットワークを例として、多要素システムのミクロとマクロをつなぐ順問題と逆問題を、グラフ上の確率過程の枠組みで紹介しました。この系で、順問題はパンデミックが起きる条件、逆問題は感染起源の推定と関係します。またグラフ上の確率過程における順問題の別例として、サイクリックな捕食者被食者関係を持つ単純な生態系において種が絶滅する条件、についても紹介しました。

 質疑応答や懇親会では、他のより現実世界で観測されやすい多要素システムまた他の参加者自身の研究への応用可能性について尋ねられたのですが、なかなかすぐに結びつくわけではないというのが率直な感想です。このような「はっ」とするような視点を見つける機会は貴重ですので、次回からもむしろ積極的に“異分野交流”を続けていければと思いました。

 

「血管リモデリングの原理解明:数理と実験から解き明かす血流メカノストレスへの応答機構」

高瀬 悠太(理学研究科 生物科学専攻 動物学教室)

 

 血管ネットワークは全身に広く分布し、酸素や老廃物を運搬するなど、高次生命活動にとって非常に重要な役割をもちます。血管ネットワークの形成過程では、1)まず無秩序なメッシュ状の血管網が作られ、2)続いて「血管リモデリング」と呼ばれるダイナミックな巨視的変化が起こり、3)最終的に秩序だった血管パターンが完成します。このなかで、血管リモデリングは血管形成過程において中核的なステップであると考えられますが、そのしくみはほとんど分かっていません。今回、この血管リモデリングに関して、卵の中のニワトリの赤ちゃん(ニワトリ胚)の周囲に広がる血管網に注目し、血流の変化→血管を構成する「細胞」の挙動変化→血管「組織」の変化、という階層をまたいだ関連性について、実験から得られた結果を紹介しました。

 質疑応答では、血管と河川のリモデリング結果との類似性(強い流れがかかる部分に太いものができる)から、「生き物らしさとは何か?」という質問をいただき、聴衆も含めて盛り上がったように感じました。専攻内だけのセミナーではこういった趣旨の質問は出にくいので、MACSならではの議論ができたのではないかと思いました。また、懇親会では、助教3人の発表について「研究対象の具体性が全く異なり、専攻の違いを強く感じた」という趣旨のコメントをいただきました。今後は、MACS関係者でこの違いを認識・共有し、分野間交流をより深められる企画を考えたいです。

 

[SG7]外部講師セミナー「機械学習におけるサンプリング」(2016年12月7日)

スタディーグループ7「自然科学における統計サンプリング」では、東北大学大学院情報科学研究科の大関真之氏を招き、セミナーを行いました。

 

「カンニング検出」でテレビや新聞を賑わせた経緯を、特有の語り口で紹介しながら参加者を惹き付け、セミナーは始まりました。そもそも「カンニング検出」は、機械学習という大きな研究枠組みの一例と言えます。前半は、その機械学習がどのように発展してきたかを、パーセプトロン、Boltzmannマシンとその多層化、そしてディープラーニングへと至る流れとして明快に説明していただきました。後半は、D-Wave社の「量子コンピュータ」の登場で近年議論が活発になっている量子アニーリング、そして新しいサンプリングマシンとしての量子コンピュータと豊富な話題を提供していただきました。

 

[SG8]ニワトリ胚の腸の観察実習(2016年11月4日)

 
 

スタディグループ8「生き物のかたちを“数理”で探る」では、本グループの教材として用いた論文“On the growth and form of the gut (Nature 2011) ”の研究対象であったニワトリ胚の腸ルーピングを実際に観察しました。

生物科学専攻の学生・教員が実験器具の使い方や観察のしかたを教え、数学専攻や物理学専攻の学生・教員たちも、自分達の手で解剖や観察を行いました。孵卵6, 8, 12, 16日目の本物のニワトリ胚を解剖し、腸のルーピング形成過程や腸間膜の有無によるルーピングへの影響などを自分達の手と眼で観察することを通じて、論文を読むだけではわからなかったことを理解したり、新たな疑問を思いついたりと、各々が有意義な時間を過ごしました。