元地球惑星科学専攻(地球物理学教室)所属・名誉教授 秋友 和典

 
 

2021年3月末をもって定年退職を迎えました。1975年に入学して以来、理学部、理学研究科の皆様には40年以上の長きに渡って大変お世話になりました。厚くお礼申し上げます。この間、学生から教員へと立場を変えながら、1年というサイクルを基本として教育、研究活動を続けてきましたが、そのあいだに生じた身近な自然の変化に改めて大学で過ごした時間の長さを感じています。

気象庁によれば1975年の京都の桜は4月10日に満開となり、当時は満開の桜が入学式を彩る風物のひとつでした。奈良県から通学していた私には、鴨川の堤を走る京阪電車から眺めた桜のトンネルが入学の晴れやかさに重なる思い出として残っています。その後、年によってばらつきがありますが、桜の開花は徐々に早くなり、今年は統計が残る1953年以降で最も早い3月26日に満開となりました。奇しくも満開の桜に見送られて大学をあとにすることになったわけです。開花の早まりが人為起源の地球温暖化によるものならば決して好ましいことではないかもしれませんが、私には日常を通して「体感」した地球の変化のひとつでもありました。

長い時間を大学で過ごした身にとって、これまでの日常から離れた現在の状態はぽっかりと穴が空いたようで少し戸惑いを感じているところですが、これまでとは違った新たな視点から引き続き地球という自然に向き合っていきたいと思います。 新型コロナウイルス感染症の蔓延はこれまで経験のない状況をもたらし、その対応に多くの労力と時間を費やせねばならない難しい時期が続いています。事態の一刻も早い収束を願うとともに、理学研究科の教育、研究に新たな展開、発展がもたらされることを祈念します。