研究科長挨拶

研究科長挨拶

京都大学大学院理学研究科長・理学部長 平島 崇男

 皆さん、京都大学理学研究科のHP にようこそ。

 当研究科は、数学・数理解析、物理学・宇宙物理学、地球惑星科学、化学、生物科学の各専攻からなり、複数のノーベル賞・フィールズ賞受賞者を輩出するなど、各分野で国内外に誇れる研究業績を上げ、また多くの優れた人材を輩出してきました。また、近年は「数理を基盤として新分野の自発的創出を促す理学教育プログラム」の実施、今年度からは研究科附属のサイエンス連携探索センター(SACRA)を新たに設置し、専攻の枠を超えた異なる分野間の融合研究や教育のさらなる促進と、新しい学術領域の開拓を目指しております。

 理学は、自然現象の理の探究を行うもので、虚心坦懐な実験や観察を通じて自然現象の本質についての信頼性の高い根拠を獲得し、それらに基づいて合理的に真実を追究する学問です。世界の有様を大きく変えるような科学上の発見の多くは、自然現象の理に対する純粋な好奇心に基づく理学が生み出してきたと言っても過言ではないでしょう。研究科教員のほとんどは、自然現象の本質・真実の発見に無常の喜びと幸せを感じていると思います。

 当研究科の誇りの一つは、好奇心旺盛で個性的かつ多才多様な教師陣です。近年、研究についてもすぐに役立つわかりやすい貢献が求められる傾向が強くなっているように思います。私たちの多くも、自分の研究が世の中の役に立つことを願っています。しかし、短期的・局所的な視点だけでは、大きな発見は難しい場合が多いと思われます。大きなブレークスルーを生む発想の転換には、広い視野を持ち、深い洞察を行える気持ちの余裕とそれを実行に移せる時間の確保が必要なのではないでしょうか。

 理学の研究にとどまらず、全ての研究活動は公正に行われることが前提です。平成31年3月に、当研究科の教員が公表した論文に不正行為が認められました。公的資金に支えられた大学として、このような事態はあってはならないことで極めて遺憾であり、関係者の皆様および国民の皆様に、心よりお詫び申し上げます。理学研究科では、これまで以上に部局構成員の研究公正に対する意識の向上に努める所存です。そのためにも、理学研究科は、教員・学生が協力しながら、自然界の現象・事実に無心で向き合い、物事の本質を見極める努力を、進めていく場であり続けたいと考えております。

在学生の皆様へ

 理学研究科・理学部は多様な個性を有する優れた教職員と供に、充実した施設・設備を有しています。しかし、最も誇るべきは、全国から理学の学風に憧れて京都に集った多様な個性を有する無限の可能性を秘めた優れた学生諸君です。良き人との出会いを通して視野を広げ、物事の本質・真相を見抜く洞察力を身につけてください。また、皆さん各人が一構成員として私たち教職員と共に、理学研究科・理学部をより魅力的な場・組織にすることにも貢献していただきたいと願っています。

 理学部の教育体制は、学生各人の選択権・自由度の大きいシステムになっています。卒業までに各科目群等で一定数以上の単位を取得しなければなりませんが、必須科目は卒業研究だけです。特に戸惑うのは、1・2回生時の受講科目の選択の仕方だろうと思います。

 このシステムは、目的意識が明確で能動的に行動できる学生さんに適しています。自らの目的が明確な方、受講計画を立てて、各自の目的に向かって邁進してください。そして、時々は周囲の教員や友人達と意見を交わすことを忘れないでください。自信過剰はややもすれば独りよがりに陥るので、周りの人と意見交換をしてください。相談することにより、自分で気づかない何かが見つかり、目的の達成のプラスになることがあると思います。急がば回れと言うことです。

 その一方で、このシステムに戸惑い、一部の授業では、高校の授業とのギャップが大きくて、自信を失うことがあるかもしれません。高校での未履修者向けの講義等もありますので、それらを各人の必要に応じて上手に活用し、教職員・先輩・同級生等と相談しながら、自身の興味・適性を絞り込んでいってください。特に、何か困ったことができたら一人で抱え込まずに、身近な友人や教員、あるいは、相談室の専門職員に相談されることを勧めます。異なる視点での助言が問題解決の糸口になると思います。

志願者の皆様へ

 アドミッションポリシーに記載しておりますように、以下のような学生に、京都大学理学部・理学研究科で、私たちと共に学び研究する人の輪に加わっていただきたく思っております。

  • 優れた科学的素養・論理的合理的思考力と語学能力を有し、粘り強く問題解決を試みる人
  • 自由を尊重し、既成の権威や概念を無批判に受け入れず、自ら考え、新しい知を吸収し創造する姿勢を持つ人

教職員の皆様へ

 予算および教職員定員削減の中での仕事増が、私たち教員の本来の職務である教育・研究の質を低下させてしまうことが懸念されます。業務を見直し、優先度の高い重要な事柄を見極めていくことが必要と思います。SACRAの運用が順調に進み、先生方に提供する情報の取捨選択と整理をし、各種作業の効率化を図るとともに、研究科内でのコンセンサス形成を大事にした運営を心がけていきたいと思っておりますので、理学研究科・理学部の発展のためにご協力をお願いいたします。

支援者の皆様へ

 理学研究科では、中長期的視点で自然現象に関する真実の探究を行う研究と、高い科学的素養・論理的合理的思考力を身に着け、粘り強く問題解決を行える眼力とたくましさを有する学生の育成に努めております。近年の、厳しい予算・定員削減下で、私たちには余裕がなくなり、研究・教育の各局面で必ずしも十分なことを実施できなくなる懸念が生じています。そのような状況を鑑み、これまでに理学研究科にご寄付等での支援をいただいた皆様には、この場を借りて、あらためて御礼申し上げます。

 そのような折に、科学に携わる者として最低限の良識である、事実や他者の研究の正確な提示に不備があったことは、大変遺憾に思っています。事実を示し、それに基づく合理的な論理展開を行い、質の高い研究成果を発表していくことに研究科を挙げて取り組んでまいりますので、今後もご理解とご支援を頂けましたらと存じます。

 なお、貴重な浄財を用いた私たちの活動状況は、ホームページおよび11月に行われますサイエンス倶楽部デイ等で報告いたしておりますので、それらをご覧いただければ幸甚です。